妊娠中、お腹が大きくなる中で運動してもいいの?と気になる方もいるでしょう。またお産には体力が必要だから、できる範囲で運動したいと考える方もいるかもしれません。
ここでは、妊娠中の運動について、注意する点やおすすめの運動についてご紹介します。妊娠中の方はぜひ参考にしてくださいね。
妊娠中は運動してもOK!
妊娠中、運動してもいいの?と気になる方もいるでしょう。
医師から制限されていない場合、基本的に妊娠中に運動しても問題ありません。
激しい運動はできませんが、少し強度の高い運動であれば問題ないとされています。
日本臨床スポーツ医学会 産婦人科部会の提言する「妊婦スポーツの安全管理基準(2019)」では以下のように基準が記載されております。
- 心拍数は150/分以下
- 運動する時間は10時〜14時の間
- 1回の運動は60分以内が目安
- 運動習慣がない妊婦は週2〜3回が目安
妊娠中運動できる条件は?いつからできる?
同じく日本臨床スポーツ医学会 産婦人科部会は妊娠中の運動について以下のように条件を定めています。
- 単胎妊娠(胎児が1人)であること
- 妊娠が正常で早産や反復する流産の既往がないこと
- 妊娠12週以降であり、妊娠経過に問題がないこと
- 産婦人科医から運動の許可があること
心疾患がある場合や、破水した場合、多胎妊娠(双子以上の妊娠)の場合は、妊娠中運動できません。
妊娠前から運動をしている場合は、妊娠中も継続して運動してもいいか、事前に主治医に確認しましょう。
妊娠中の運動のメリット
「初期は動きすぎると心配だし、後期はお腹が大きくなって動けないのでは?」と考える方もいるのではないでしょうか。妊娠中に運動するメリットはたくさんあります。
気分転換・ストレス解消になる
妊娠初期はつわり症状が出る方が多く、またホルモンバランスの変化から気分が落ち込みやすくなります。それだけでなく、妊娠中は食事や生活など、注意することや体調がすぐれないことが多くあり、生活や行動に制限が出るため、ストレスがたまりやすいこともあるでしょう。
運動することで、気分転換になり、ストレス解消につながります。
体重コントロールができる
特に妊娠中期ごろになると、つわりが終わり、食欲が増えてくることから、食事量が増え体重が増えることが多いでしょう。
妊娠中適切な体重増加は必要ですが、急激な体重増加は妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクが高くなります。
そのため、適切な範囲内での体重増加が必要になります。食事だけでなく運動もすることで、体重コントロールがしやすくなるでしょう。
体力づくりができる
妊娠前まで運動習慣があった人は問題ありませんが、妊娠前まで運動習慣がない方は、体力づくりのためにも運動をおすすめします。
出産に向けて、妊娠中から体力づくりが必要です。また、体力は産後の体の回復スピードにも影響があるため、妊娠中からできるだけ運動習慣をつけておきましょう。
便秘予防になる
妊娠中はホルモンの影響で腸の動きが悪くなること、大きくなる子宮が腸を圧迫することから便秘になりやすい状態です。また、妊娠中動かず安静にしているとさらに便秘になりやすいでしょう。
妊娠中の運動は便秘予防になりますし、腰痛や肩こりなど、妊娠中のマイナートラブル予防にもつながりますよ。
妊娠中どのような運動ならしてもいい?
妊娠中の運動の必要性はわかったけれど、どんな運動をしたらいいの?と思う方も多いでしょう。ここからは、妊娠中におすすめの運動をご紹介します。
ウォーキング
ウォーキングはどこでもできる簡単な運動方法です。また、体への負担も少なく、運動時間の調整ができるため、まず運動を始めようと考えている人におすすめです。
近所の散策がてらウォーキングしてもいいでしょう。なかなか運動ができないという場合は、スーパーまで歩いて行く、ウィンドウショッピングしながら歩くなど、普段の生活に取りいれると始めやすいですよ。
マタニティヨガ、ピラティス
妊娠中の運動で代表的なマタニティヨガやピラティスは、妊娠中に避けた方がいい姿勢やポーズがないため、安心して始められます。また、自宅で動画やDVDなどをみながら始められることも魅力的です。天候に左右されず、自分の好きなタイミングででき、感染症の心配もなく自宅で安心して始められる運動です。
ヨガやピラティスはゆっくり呼吸しながら体を動かすため、リラックス効果もありますし、腰痛や肩こりなどのマイナートラブル予防にもつながります。
また、病院によってはマタニティヨガ教室を開催しているので、妊婦さん同士の情報交換やお友達づくりの場にも最適です。
当院でも毎週木曜日にマタニティヨガ教室を開催しております。
マタニティスイミング
マタニティスイミングはスポーツジムやスイミングスクールなどで行うことが一般的です。体に水圧がかかるため、むくみの改善にもつながります。お腹が大きくなっても、水の中では浮力でリラックスでき、お腹の重さが解消されます。
施設によっては、インストラクターだけでなく、助産師や看護師などがサポートしているところもあるので、不安な方は助産師が補助的にいる施設を選ぶといいでしょう。
ストレッチ
ストレッチは、自宅でも簡単に続けられる方法です。ゆっくりできること、体への負担も少なく、準備もせずに始められることも魅力的です。特に出産時に必要な体勢の練習もできるため、いろいろなストレッチを組み合わせるといいでしょう。
妊娠中の運動の注意点
妊娠中の運動を進める中で注意するポイントがいくつかあります。
主治医に運動することを伝える
まず大切なことは、主治医に運動することを伝えることです。激しい運動でない場合、妊娠初期の運動が流産につながることは少ないと言われていますが、どのような運動が影響するか、自己判断が難しいこともあるでしょう。また、妊娠経過に注意が必要な場合は、運動を控えるよう指示があるかもしれません。
そのため、運動を始める前には、必ず主治医に運動の内容や時期について確認しましょう。
真夏の炎天下、高温多湿の環境下で運動しない
真夏の炎天下や高温多湿の環境下での運動は体温上昇につながります。妊娠初期でも後期でも、赤ちゃんに影響が出る可能性があります。
妊婦さんが熱中症になる可能性もありますので、運動する環境には十分注意しましょう。
運動前後のお腹の張りや胎動に注意する
妊娠中期以降は生理的なお腹の張りが出てきますが、運動前後でのお腹の張り、胎動に注意しましょう。運動後少し安静にするとお腹の張りが落ち着く場合は問題ありませんが、お腹の張りがどんどんひどくなる場合や、胎動がわかりにくい、感じない場合は病院に連絡してください。
体調に注意し、変化があれば無理せず中断する
運動ができると医師から許可が出ていて、体調が落ち着いていても、運動中に体調が変化することがあります。特に妊娠中は体調の変化が起きやすいため、変化があれば無理せず休憩しましょう。
転倒に注意する
妊娠中はお腹が大きくなるため、重心が前・下側へと変化します。また、体重も増えるため、バランスを崩しやすい状態です。平坦な場所でないと、さらに転倒の危険性が高くなるため、注意しましょう。
転倒してお腹をぶつけたり、お腹に物が当たったりすると、常位胎盤早期剥離という胎盤が先に剥がれてしまう状態になる可能性があります。常位胎盤早期剥離は、赤ちゃんも妊婦さんも命の危険がある非常に危ない状況です。
また、転倒するときにお腹をかばって尻もちをついて打撲したり、足腰に負担をかけることでネンザしてしまったりすることもあります。
妊娠中の運動は、普段以上に転倒に注意しながら安全に配慮しましょう。
まとめ
妊娠中の運動は医師から制限されていない場合以外はできるだけすることをおすすめします。激しい運動は体への負担が大きいため、少しキツイと感じる程度の運動をしましょう。
お腹が大きくなると運動が億劫に感じるかもしれませんが、出産の体力づくりやストレス解消などメリットが大きいため、できる範囲から始めましょう。
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