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生理不順について

医療法人みらいグループ

生理が順調に来ていることは、女性にとっては健康のバロメーターの一つです。ところが「生理の周期がばらばら」「生理がきてもすぐ終わってしまう」「生理が人より長い気がする」といった生理の乱れを訴える女性の方が増えています。また女性にとって生理は毎月の出来事ということもあり、自分の生理が順調かどうか知らないという方も意外と多いです。

正常な生理

生理(月経)とは、「約1ヶ月の間隔で起こり、限られた日数で自然に止まる子宮内膜からの周期的出血」と定義されています。医学的に正常な生理とは、以下に当てはまる生理のことを言います。

  • 正常な生理周期日数:25~38日
  • 変動:6日以内
  • 持続日数:3 〜7日以内
  • 排卵:あり
  • 卵胞期日数: 17.9±6.2日
  • 黄体期日数:12.7±1.6日
  • 出血持続日数:3~7日(平均4.6日)
  • 経血量(生理での出血量):20~140ml、1日に出る経血量は多くても30ml以内
  • 初経は10~14歳、閉経は43~54歳

正常な生理(月経)周期は、生理が始まった日から次の生理の前の日を1サイクルとして計算します。生理が始まってから排卵が起こるまでの期間を卵胞期、排卵から次の生理が始まるまでの期間を黄体期と呼んでいます。生理は2つの女性ホルモンエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)によってコントロールされています。エストロゲンとプロゲステロンの分泌には脳下垂体や視床下部、卵巣などが密接に関わっています。

生理不順の定義

生理(月経)不順とは、上記の定義に当てはまらない生理のことを言います。生理の周期や期間の乱れ(異常)のほか、月経血の異常など、一口に生理不順といってもその内容は様々です。

生理不順の種類

生理不順は、生理周期の異常と生理期間の異常の2つに大きく分けられます。

生理周期の異常

生理周期の異常としては、以下のようなものがあります。

  • 頻発(ひんぱつ)月経:周期が24日より短いもの
  • 稀発(きはつ)月経:周期が39日より長いもの
  • 無月経:3ヶ月以上生理がこないもの
  • 不整周期月経:生理周期がバラバラ(最長月経周期と最短月経周期の差が7日以上)で、次の生理がいつ起こるのか予測がつかないもの

頻発月経

「頻発月経」は、生理の周期が24日以下と短い場合です。頻発月経の方は、1ヶ月の間に2〜3回生理が来ることも珍しくありません。

ホルモンバランスの乱れによって起こる頻発月経は、思春期や更年期に多くみられます。思春期の場合は、体の成熟とともに月経周期も安定してくることがほとんどです。更年期の場合は卵巣機能が低下してきたことによって起こるので、他の症状を伴う場合はホルモン補充療法などの適応になります。

頻発月経で主に問題となるのは、出血があるのに排卵がない「無排卵周期症」の場合です。この場合は、少量の経血が長く続きます。排卵がないので、このままでは妊娠できません。

稀発月経

生理の周期が39日以上、3ヶ月未満の状態を「稀発月経」といいます。ストレスや急激なダイエットなどで卵巣の働きが落ち、女性ホルモンが十分に分泌されていない可能性があります。排卵のない稀発月経は、不妊の原因となることがあります。

無月経

妊娠していないのに3ヶ月以上月経が来ていない場合を無月経といいます。無月経には、生まれた時から一度も月経が来ない「原発性無月経」と、もともとあった生理が来なくなった「続発性無月経」があります。

続発性無月経は、第一度と第二度に分かれます。第一度無月経は、プロゲステロンの分泌のみが減少しているタイプです。プロゲステロンを投与すると、消退出血が見られます。ストレスやダイエットによるホルモンバランスの乱れからくる無月経は、第一度無月経のことが多いです。
第二度無月経では、エストロゲンとプロゲステロンの両方とも分泌が減少しており、両方のホルモンを投与して始めて出血が起こります。

無月経を排卵が来ないまま放置すると、不妊の原因となるばかりでなく、そのまま閉経を迎えてしまい、骨粗鬆症など重大な病気の原因となる可能性があります。

不整周期月経

不整周期月経は、生理の周期のうち一番長い時と短い時の差が7日間以上あるものです。ホルモンバランスが崩れやすい思春期や更年期などに多くみられます。

生理期間・量の異常

生理期間の異常としては、以下の2つがあります。

  • 過長月経:生理期間が8日以上続くもの
  • 過短月経:生理期間が2日以内で終わるもの

また経血量の異常としては、以下の2つがあります。

  • 過多月経:とにかく経血量が多い状態
  • 過少月経:経血量が少ない状態

過長月経・過多月経

生理期間が8日以上続くものを過長月経といいます。過多月経は、とにかく経血量が多い状態です。レバーのような血の塊が出てきたり、経血量が多すぎて市販のナプキンでは対応できないこともよくあります。出血量が多いため、貧血になることもあります。

過多月経はホルモンバランスの乱れの他、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮がんなど婦人科系の病気が原因となっていることがあります。特に生理痛がひどいなど、他の症状が一緒にある場合には受診をお勧めします。

過短月経・過少月経

生理期間が2日以内で終わるものを過短月経といいます。過少月経は経血量が少ないという状態です。生理ナプキンを使うほどの出血はなく、おりものシートなどで対応可能な場合は過少月経であるといえます。

過短月経・過少月経の場合は女性ホルモンの量が足りないことが一番多い原因ですが、子宮自体の問題(子宮の発育不全など)、無排卵周期症などの他、甲状腺機能の異常が隠れていることがあります。

また、更年期が既に始まっている可能性も否定できません。最近では、早い方では30歳代後半からプレ更年期ともいうべき女性ホルモンの減少が見られることもあり、あまりに生理が少ない・短い場合はホルモン検査を受けましょう。

生理にまつわるその他の異常

生理にまつわる異常として忘れてはいけないものとして、月経ではない時期に出血が見られる「不正出血」などがあります。

不正性器出血

特に頻発月経の方など生理不順を主訴として病院を受診される方の中には、不正性器出血の方が少なくありません。生理自体は順調でも、生理と生理の間に出血が見られるので、「また生理が来た」と勘違いしてしまうのです。

不正性器出血の原因は多岐にわたります。子宮内膜症や子宮筋腫、萎縮性膣炎、感染症などの良性のものから、子宮頸がん・体がん、卵巣がんなど悪性腫瘍によるものまでさまざまです。特に、「もう閉経したと思ったのに、久しぶりに生理がきた」という場合は不正出血を起こしていることがあり、注意が必要です。

生理不順の診断・検査

生理不順を訴える患者さんの診察は、まず妊娠しているかどうかの確認から始まります。妊娠しているかどうかは、問診に加えて尿検査(尿中hCG)で診断します。

妊娠していない場合は、生理不順を起こす病気がないかどうかのチェックを行います。内診や経膣超音波検査、細胞診検査、血液検査(血中ホルモン検査、貧血の有無など)などを行います。

思春期の女性の場合は内診が嫌だというケースも多いのですが、その時期の生理不順はほとんどが視床下部性(ホルモンバランスの乱れ)のため、性行為の経験がない場合は内診および内診しないとできない経膣超音波検査、子宮頸部細胞診など)は省略できることがほとんどです。

腹部の観察は、経腹超音波検査にて行います。一般診察にて、多毛・脱毛(アンドロゲン過剰)、乳汁分泌(プロラクチン過剰)、甲状腺腫大(甲状腺ホルモン過剰)など、女性ホルモン以外のホルモン過剰を示す所見がないかも大切な点となります。

明らかな病気のない月経周期異常(機能的月経周期異常)の場合は排卵がないことが多いので、基礎体温表をつけていただき、そもそも排卵があるかどうか、また卵胞きや黄体期の長さは適切かどうかを確認します。心身のストレスレベルや過度な運動・ダイエット、内服薬の確認も重要なポイントです。

病院を受診すべき生理不順

生理不順かなと思ったら、基本的に一度は婦人科への受診をお勧めします。大きな病気が隠れていたり、排卵が止まってしまっていることが時々あるからです。ただし思春期のうちはまだ身体が成長しきっていないため、月経周期の多少の乱れは様子を見ていても問題ありません。

逆に、以下に当てはまる生理不順は、早めの受診をご検討ください。

  • 3ヶ月以上生理がこない:無月経の状態。排卵がない可能性もあるので速やかに受診を。
  • 出血量が多い:子宮内膜症など婦人科系の病気の可能性。大量出血による貧血の可能性。
  • 多毛・脱毛、乳汁分泌がみられる場合:ホルモン異常(高アンドロゲン、高プロラクチン)の可能性。
  • 初潮から40代前半までずっと生理不順が続いている:多嚢胞性卵巣症候群などの可能性
  • 妊娠を希望している場合:無排卵を放置すると、不妊の原因となるため

生理不順の治療方法

生理不順の原因となっている病気があるときは、そちらの治療を先に行います。ホルモンバランスの乱れによる機能的生理不順の場合、治療の対象となる生理不順はそれほど多くありません。無月経の場合、日常生活に差し支える場合、また妊娠を希望する場合など、本人の希望がある場合に治療を検討します。

全ての生理不順で必要な治療

体重は多すぎても少なすぎても、生理不順の頻度が高くなることがわかっています。また、過度なダイエット(体重が短期間に5kgまたは体重の10%以上減少)は、体重減少性無月経を誘発します。
肥満(BMI≧25)や痩せ過ぎ(BMI≦18)が見られる場合は、どちらの場合もまず適正体重(BMI22〜23前後)に近づけるよう、食事指導や運動指導などを行います。

また、規則的な生活を送ることも非常に大切です。朝は早起きし、夜はぐっすり眠れるように生活リズムを整えましょう。ストレスもホルモンバランスに大きな影響を与えます。必要に応じてカウンセリングや認知行動療法などを受けていただくこともあります。

さらに現在タバコを吸っている方については、禁煙をお勧めします。

頻発月経・過多月経の場合

妊娠希望がなければ、低用量ピルを用います。

稀発月経・無月経の場合

稀発月経・無月経の場合は、原発性無月経か続発性無月経かによって、また妊娠を希望するかどうかによって治療が異なります。

続発性無月経で妊娠を希望する場合

クロミフェン療法による排卵誘発を含めた不妊治療を行います。妊娠を目的とした治療となりますが、結果的に生理周期も整うことが多いです。

続発性無月経で妊娠を希望しない場合

まずはプロゲステロンの補充療法を行います。それでも生理が来ない場合は、エストロゲンとプロゲステロン療法の補充を行います。場合によっては低用量ピルを用いることがあります。

原発性無月経の場合

原発性無月経の場合は、場合によって異なります。生まれつき処女膜や腟が閉鎖している場合は手術療法、ホルモン系統に異常が見られる場合はホルモン療法を行います。ターナー症候群などの染色体異常の場合は生理の発来が望めないので、希望があればカウンセリングなどを実施します。

生理不順かどうか自分で判断する方法

まずは基礎体温をつけてみましょう。3ヶ月間続けると、生理周期の乱れの程度がある程度はっきりします。また低温期と高温期がきちんとあるかどうかから、排卵があるかどうかがよくわかります。

生理不順で病院を受診する際にも、基礎体温表は診断の大きな助けとなります。

定期的な検診で、早期発見を

生理の乱れは、ちょっとしたストレスやダイエットなどからも簡単に起こります。ひどい生理不順を放置しておくと、将来妊娠できなくなる可能性もあります。しばらく生理が来ていないという場合はもちろんのこと、これまでご自身の生理は普通だと思っていたけど実は普通じゃなかったという場合など、生理について気になることがある方は、ぜひ一度当院までお気軽にお越しください。