羊水という言葉は聞いたことがあっても、どのような役割があるのか詳しくはわからないという人もいるのではないでしょうか。
この記事では、羊水の役割や羊水にまつわるトラブルについて解説します。
羊水とは
羊水は、妊娠中に赤ちゃんが入っている子宮を満たす液体で、赤ちゃんが成長するためには欠かせないものです。電解質や脂質、アミノ酸など、赤ちゃんの成長に必要な複数の成分でできた、アルカリ性の液体です。
羊水の役割は?
羊水には大切な役割がいくつかあります。
具体的にどのような働きがあるか解説します。
赤ちゃんを守るクッションの働き
まず大切な働きは赤ちゃんを守ることです。
前述の通り、羊水は子宮の中を満たす液体で、この中で赤ちゃんはぷかぷか浮いて動いています。ママが転んでしまう、お腹にぶつかるなど、外からの刺激があっても、羊水があることでクッションとしての役割を果たし、赤ちゃんを守る働きがあります。
赤ちゃんの肺を育てる働き
他にも、赤ちゃんの肺を育てるという大切な働きがあります。
赤ちゃんは成長するにつれて、お腹の中で羊水を飲むようになります。飲んだ羊水は肺や腸から吸収されて、腎臓でさらに吸収されて、おしっことして排出します。
このように、生まれてからの呼吸の練習をするようになるのです。
赤ちゃんの成長に必要な空間を作る働き
また、赤ちゃんの筋肉や骨の発達にも大いに関係しています。
赤ちゃんは成長するにつれ、お腹の中で動くようになります。羊水というプールの中で体を回転させたり、手足を曲げ伸ばしすることで、筋肉や骨が成長します。
羊水があることで、赤ちゃんが動くために必要な空間を作ることができるのです。
お腹の中を保温する働き
お腹の中で赤ちゃんを保温する働きもあります。
羊水は体温より少し高めの37度ぐらいです。ママの体温の変化によってお腹の中の羊水の温度も多少変化しますが、赤ちゃんは血液の量を変化させ、一定に保っています。
また、ママが風邪に罹るなどして熱が出ても、羊水の温度はすぐに上がるわけではなく、徐々に変化するので、心配ないでしょう。
羊水の作られ方
羊水は羊膜という膜からや、赤ちゃんの皮膚から出る透明な液体成分からできます。妊娠中期以降になると、赤ちゃんの体が成長して作られていくため、赤ちゃんの尿が主な成分です。
赤ちゃんはお腹の中で羊水を飲んで、おしっこで出す、ということを繰り返しています。
そうすることで、動き回るために必要なスペースを保っているのです。
正常な羊水は?
羊水は通常透明の液体で、無臭です。妊娠後期になると、赤ちゃんの皮膚の一部がはがれて浮いているため、乳白色のように見えることもあります。
正常な羊水の色
通常透明〜乳白色の羊水ですが、なんらかの原因でお腹の中の赤ちゃんが苦しい状況になると、赤ちゃんはうんちをすることがあります。
正常な羊水の量
羊水の量は、妊娠中期から徐々に増えていき、妊娠後期の34週ごろにピークを迎え、700〜800mlになります。その後は少しずつ減っていき、出産時には約500mlと言われています。
羊水は赤ちゃんが飲み、おしっことして出すというサイクルを繰り返しているため、ほぼ一定の量に保たれていますが、妊娠後期には毎日約1000mlが入れ替わっていると言われています。
羊水の量はどうやって調べる?
妊娠中の羊水の量は赤ちゃんの状態を知るために大切な情報です。
羊水の量は体の外からはわかりませんし、もし問題があった場合でもママの自覚症状も特にありません。妊婦健診は赤ちゃんの成長だけでなく、羊水などお腹の中の状態を確認するためにとても大切なことなので、健診は欠かさず受けるようにしましょう。
羊水の量は超音波検査で測定が行われ、方法は2種類あります。
羊水ポケット(AP)
赤ちゃんや臍の緒などを含まない広い断面で、子宮の壁に垂直に検査の機械(プローべ)を当てて、羊水の円の最大径を計測します。
羊水インデックス(AFI)
お腹から子宮を四分割して、母体の長軸に沿って床に対して垂直にプローベをあて、羊水の深い部分を4箇所で測定した合計を“cm”で表記したものです。
羊水に関連したトラブル
羊水に関連したトラブルにはどのようなものがあるのでしょうか。
ここからは、よくある羊水に関連したトラブルについてご紹介します。
羊水混濁
赤ちゃんのうんちは胎便と呼ばれ、通常は胎内にいる間は排出することはありませんが、なんらかの原因で赤ちゃんが苦しい状況になり胎便を排出してしまうことがあり、結果、茶褐色や緑色など、色が濁ってしまうことがあります。
これを羊水混濁と言います。ただ、羊水混濁しているかどうかは出産のとき、破水をしているか、分娩のときしかわかりません。
羊水過多
羊水過多とは、お腹の中の羊水が正常範囲より多いことを言います。
定義
羊水ポケット(AP)8cm以上、羊水インデックス(AFI)25cm以上の場合羊水過多と診断されます。
原因
羊水過多は赤ちゃん側の原因と、ママ側の原因があります。それぞれ以下の通りです。
- 赤ちゃん側の原因
食道閉鎖、十二指腸閉鎖、染色体異常、口や首、肺などのできもの、双子など - ママ側の原因
糖尿病、内分泌疾患、胎盤に関連した病気など
症状
ほとんど症状がないことが多いですが、お腹の張りが増えることがあります。また、妊娠週数に比べて、お腹が大きい特徴があります。
治療方法
早めの分娩(39週までの分娩)場合により羊水除去など
羊水過少
羊水過少とは、お腹の中の羊水が正常範囲より少ないことを言います。
定義
羊水ポケット(AP)2cm未満、羊水インデックス(AFI)5cm未満の場合、羊水過少と診断されます。
原因
羊水過少は赤ちゃん側の原因と、ママ側の原因があります。それぞれ以下の通りです。
- 赤ちゃん側の原因
腎臓が機能していない(無機能腎)、腎臓がない(腎無形成)、染色体異常、赤ちゃんの成長がゆっくり(胎児発育遅延)など - ママ側の原因
妊娠高血圧症候群、膠原病、血栓症など
治療方法
点滴など
予後
妊娠中期以降の羊水過少は肺などの成長が妨げられたり、関節が固くなったり動きが制限されたりなどが起こります。お腹の中で妊娠継続ができても、生まれてから呼吸がうまくできないこともあります。
妊娠後期に羊水が減った場合は破水の検査をします。妊娠後期まで羊水量が正常だったにもかかわらず、徐々に羊水の量が少なくなってきた場合は、お腹の中の循環が悪くなっている可能性があります。
羊水塞栓症
羊水がママの血液の中へ入ることで呼吸や循環の障害が起こることを羊水塞栓症と言います。
原因
原因ははっきりわかっていません。
リスクになる人
報告によると、リスクは以下のとおりです。
- 35歳以上
- 誘発分娩
- 帝王切開
- 吸引分娩
- 羊水過多症
- 前置胎盤
- 子癇
- 胎盤早期剥離など
症状
呼吸困難、胸の痛み、血圧の低下、サラサラとした出血の増加、意識の低下、強い腹痛などさまざまです。サラサラとした出血が増える→子宮がゆるむ→大量に出血する→ショックになることが多いと言われています。
予後
羊水塞栓症の発症率は10万分娩中5例程度とかなり低いですが、母体死亡の原因となる確率が高い病気です。
治療
気道確保、輸液の投与、輸血など
予防方法
残念ながら、確実な予防方法はない。
羊水についてよくある質問5選
ここからは羊水に関連したよくある質問について解説します。
羊水検査って何を調べる検査?
羊水検査とは、何を調べる検査なのか気になる人もいるのではないでしょうか。
羊水には赤ちゃんの体からはがれ落ちた細胞が浮いているため、その細胞をとり、培養して染色体の病気があるかを調べます。検査の時期は施設によって異なりますが、妊娠15〜16週前後に検査をする施設が多いです。問題が無い場合は、1時間程度の検査となります。
羊水検査は安全?
羊水検査は、お腹に超音波検査を当てて、赤ちゃんの状態や胎盤の位置を確認し、お腹に針を刺して羊水をとる検査です。
お腹に針を刺す検査なので、赤ちゃんへの影響はないのか、流産の可能性はないのかと不安に思う人もいるかもしれません。ただ、羊水検査後の流産する可能性は約0.1〜0.3%程度で、それほど高い数値ではありません。
また、検査後に出血や破水、腹痛などが起こることもありますが、約1%程度と、それほど多くはありません。
危険性は少ない検査ですが、100%安全な検査ではありません。
羊水が多め、少なめと言われたときは何に気をつけたらいい?
羊水が多め、少なめと言われた場合、すぐに羊水過多や羊水過少の診断にはなりません。
羊水が多めと言われたときは
羊水が多めと言われたときは、赤ちゃんがうまく羊水を飲めない病気や、ママの病気が原因の可能性がありますが、赤ちゃんもママも問題がない場合でも、羊水の量が多くなったりすることはあります。
日常生活に注意点などはありませんが、お腹の張りに注意しましょう。
羊水が少なめと言われたときは
羊水が少なめと言われたときは、破水している可能性や赤ちゃんの元気がない状態ではないかを確認します。
ただ、出産が近づくと超音波検査で羊水の量が少なくなっていることが多いです。急激に量が減っていない場合や、赤ちゃんが元気な場合は心配しすぎなくてもいいでしょう。
羊水の量と妊婦の体重の増え方は関係がある?
羊水の量と妊婦さんの体重の増え方は関係があるのか気になる人もいるかもしれません。
羊水の量と妊婦の体重の増え方に対する根拠はないため、気にする必要はないでしょう。
妊娠後期は羊水が減る?
妊娠後期に羊水の量が減ると聞いたことがあるかもしれません。
先述のとおり、羊水は妊娠34週頃までにピークを迎えるため、その後は出産まで徐々に減っていきます。ただ、急激に減るわけではありませんので、心配しすぎる必要はありません。
予定日が近くなり、出産間近になると羊水の量が減ることが多いですが、極端に少なくなっていて、羊水過少と診断されない限りは、心配する必要はありません。普段通りの生活を送りましょう。
羊水は赤ちゃんの成長・発達に大切な役割がある
羊水はお腹の赤ちゃんを守り、成長・発達のために大切な役割があります。
羊水は量が大切ですが、個人差があり、多めの場合や少なめの場合があります。まずは今の状態を確認する為にも、定期的に妊婦健診を受けましょう。
妊娠中は制約も多く、ストレスを感じることもあるかもしれませんが、ママの健康が赤ちゃんの健康にもつながりますので、まずは健康的な生活を意識することからはじめましょう。