細菌やウイルスにより感染するものを感染症と言いますが、妊娠中は赤ちゃんに影響のある感染症もあるため、注意が必要です。この記事では、妊娠中に気をつけたい病気や感染症について、予防方法や妊娠中の注意点などを解説します。妊婦さんだけでなく、家族や近くに妊婦さんのいる方は、妊婦さんへうつさないよう、感染予防に気をつけましょう。
母子感染とは?
妊娠中に母体から赤ちゃんへ何らかの原因で感染することを母子感染と言います。母子感染は感染経路が3種類あり、
- 赤ちゃんがお腹にいる時に感染する「胎内感染」
- 分娩の時に産道を通ることで感染する「産道感染」
- 出産後母乳育児によって感染する「母乳感染」
もともとウイルスを持っている(キャリア)人もいれば、妊娠中に感染する人もいます。
妊婦さんの予防は手洗いうがいなど基本的な清潔を心がけることが大切です。また、妊娠中は接種できないワクチンもあるため、ワクチンで予防できるものは、周囲の人がワクチンを接種することも重要でしょう。
妊娠中に気をつけたい感染症
妊娠中に気をつけたい感染症は多くあります。赤ちゃんに影響がある感染症を解説しますので、妊娠中は予防に努めましょう。
風疹
風疹は飛沫感染で起こる急性感染症です。欧米では風疹の排除に成功していますが、日本では2004年、2012年〜2013年と2回流行しています。小児期のワクチン接種によって小児の感染症は減少していますが、ワクチン接種をしていない成人男性の間で流行しました。風疹は病期が短く死亡率も高くありませんが、妊娠中は感染に注意が必要です。
風疹の症状は?
風疹に感染すると、約2〜3週間後に発熱や発疹、リンパ節の腫れなどの症状が現れます。風疹の症状は子どもは比較的軽いことが多いですが、大人が感染すると発熱や発疹の期間が長く、関節痛もひどくなることが多いと言われています。
妊娠中に風疹に感染したらどうなる?
妊婦が感染すると先天性風疹症候群(CRS)を起こすことがあります。先天性風疹症候群は難聴、白内障、心疾患などの症状がある子どもが生まれる可能性があります。妊娠1ヶ月で感染すると約50%以上、妊娠2ヶ月で感染すると約35%の確率で先天性風疹症候群を発症すると言われているのです。先天性風疹症候群の治療法はなくワクチンで予防することしかできません。
風疹の予防方法は?
風疹の予防方法は、ワクチン接種しかありません。成人の感染の多くは30代〜40代の男性で、女性は妊娠適齢期の20代〜30代が多いです。妊娠を希望する女性、またそのパートナーは抗体検査を行い、抗体が低い場合はワクチン接種が有効でしょう。自治体によっては抗体検査を無料で実施していますし、ワクチン接種の助成を行っていますので、調べてみてください。
妊娠中は何に気をつける?
妊娠初期に採血検査で風疹の抗体を確認します。風疹の抗体が低い場合は、以下に注意しましょう。
- パートナー、同居家族のワクチン接種
- 人混みや子どもの多いところを避ける
妊娠中はワクチン接種ができないため、予防が大切です。特に先天性風疹症候群は妊娠20週ごろまでの感染で起こりやすいと言われているため、妊娠24週ごろまでは感染予防に努めましょう。不要不急の外出を避け、人混みや子どもの多いところへ外出する場合はマスクの着用、手洗いうがいを徹底し、感染予防をしてくださいね。
トキソプラズマ
トキソプラズマ感染症の原因となる原虫です。加熱が不十分な肉(レアステーキや生ハム)や犬・ネコの糞や尿、土に多く存在します。人から人へ感染することはありません。
トキソプラズマに感染するとどうなる?
健康な人が感染しても約80%の人は症状がありません。症状が出ても発熱や筋肉痛、リンパの腫れなどで重症化の心配はありません。
妊娠中に感染するとどうなる?
トキソプラズマは妊婦さんのうち2〜10%が抗体を持っています。そのため、抗体を持っている人はほとんどの場合、赤ちゃんに感染することはありません。
抗体を持っていない90〜98%の人が感染しても、免疫機能が正常な場合、ほとんどの方が無症状です。初感染のうち約30%が胎盤経由で感染してしまうのです。妊娠初期に感染するほど赤ちゃんへの影響は大きく、約15%の場合、先天性トキソプラズマ感染症を発症すると言われています。
ただ、妊娠中に先天性トキソプラズマ感染症に感染する人は妊婦さん全体の約0.2%と言われていて、そのうちの約15%の確率で赤ちゃんに感染する可能性を考えると、母子感染の確率はかなり低いことがわかります。妊娠中に感染がわかった場合は「アセチルスピラマイシン」という治療薬を飲むことで、赤ちゃんへの感染を減らすことができるので、過度に心配する必要はありません。
赤ちゃんへの影響は?
先天性トキソプラズマ感染症は赤ちゃんがお腹の中で亡くなってしまったり、流産の原因になったりします。それだけでなく、目や脳、肝臓の機能に障害が出る可能性があります。また、生まれた時は無症状でも成人になるまでの間にてんかんやけいれんなどの症状が出ることもあるのです。
トキソプラズマの検査はどのようにする?
トキソプラズマの抗体検査は血液検査で行います。妊娠中に検査をしている病院も多いので、気になる場合はかかりつけ医に相談しましょう。
トキソプラズマの抗体は「IgG型」と「IgM型」の2種類あり、「IgG型」は過去の感染を確認し、「IgM型」はこの数年以内での最近の感染を現します。「IgM型」が陽性の場合でも疑陽性の可能性が約70%あるので、詳しい検査を行います。
トキソプラズマの感染を予防するためにはどうすればいい?
トキソプラズマの感染を予防するために、
- 肉を十分に加熱する
- 野菜や果物はよく洗う
- 土を触ったあとはしっかりと手を洗う
- ネコのお世話はなるべく家族にお願いする
このような感染予防対策が重要です。具体的に解説します。
肉を十分に加熱する
生ハムや鳥刺し、ユッケなどの生肉にはトキソプラズマが寄生している可能性があります。可能性としてはかなり低いですが、生肉は食中毒の危険性もあります。妊娠中は特に抵抗力が低下し、感染しやすい状況になるので、食中毒予防のためにも生の肉は食べないように、肉を食べる時は十分に加熱しましょう。特に野生肉を使った「ジビエ料理」はしっかりと加熱調理をしてください。
ローストビーフや生ハムもおおむね問題ないことが多いですが、あとから感染していないか不安になることもあるので、心配な方は妊娠中は控えておきましょう。また、生肉を切った包丁やまな板はしっかりと洗ってくださいね。
野菜や果物はよく洗う
野菜や果物に土が付着している場合、土の中にトキソプラズマの卵が付着していることがあります。そのため、野菜はしっかりと洗い、皮をむいて調理するようにしましょう。そして、土のついた野菜や果物を扱った調理器具はしっかりと洗い、手は石けんを使って十分に洗ってください。
土を触ったあとはしっかりと手を洗う
土や砂の中にはトキソプラズマの卵が混じっていることがあります。ガーデニングで土を触ったり子どもと砂遊びをしたりする場合は、手袋をつけて触るようにし、土を触ったあとは石けんで十分に手を洗いましょう。また、子どもも土を触ったあとはしっかり手を洗うようにし、家族で感染予防に努めましょう。
ネコのお世話はなるべく家族にお願いする
ネコのフンの中にトキソプラズマの卵が排出されることがあるため、飼い猫がいる方は注意が必要です。妊娠中に新しい猫を飼わないようにし、野良猫には触らないようにしましょう。もともと飼い猫がいる場合は、外で鳥などを食べていなければトキソプラズマに感染する機会はあまりないため、部屋飼いにしてキャットフードをあげるようにしていれば過度に心配する必要はありません。ただ、飼い猫であっても寄生虫を持っている可能性はあるため、トイレの砂などフンの処理は家族にしてもらった方が安全でしょう。どうしても妊婦さんがする場合は、手袋を着用し、処理後は石けんをつけて十分に手洗いをしてくださいね。猫のフンにトキソプラズマが排泄された場合、24時間以内であれば未成熟で感染力がないため、トイレの砂はこまめに掃除しましょう。
HIV/エイズ
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)が原因の感染症で、感染経路は血液や母乳、精液、膣分泌液などの体液が直腸や肛門、性器などの粘膜や傷口から体内に侵入することで感染します。日本では、妊娠初期のスクリーニング検査をほぼ100%の施設で実施しており、陽性の場合は、確認検査のためウエスタンブロット法、PCR法の両方の検査を実施します。
HIVに感染するとどうなる?
HIVに感染すると長い時間をかけて徐々に免疫機能が低下し、さまざまな病気にかかりやすくなります。治療により生命予後は昔より飛躍的に長くなりましたが、治癒は困難であり、生涯にわたり治療が必要になります。妊婦さんがHIVに感染していると、胎内感染、母乳感染、産道感染それぞれ3つの経路で赤ちゃんへ感染するため、それぞれの感染経路に対しての対策が必要になるのです。
妊娠中の治療と対策は?
妊娠中は抗ウイルス薬の服用を行います。出産方法はほとんどの場合帝王切開です。出産後は赤ちゃんへの感染を予防するため、母乳をあげずミルクを使用し、赤ちゃんに対しては副作用など問題がなければ6週間抗HIV薬の予防投与を行うことが推奨されています。適切な治療を行うことで、赤ちゃんへの感染を1%以下に抑えることができます。
HTLV-1
成人T細胞白血病(adult T cell leukemia:ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HTLV-1 associated myelopathy:HAM)HTLV-1関連ブドウ膜炎(HTLV-1 associated uveitis:HU)の原因ウイルスとなる感染症です。
感染経路は母子感染(ほとんどが母乳)、性行為での感染、輸血による感染があります。妊娠中にスクリーニング検査を行い、陽性の場合はラインブロッド法(LIA法)により確認検査を行います。
感染したらどうなる?
感染した場合、約95%の人は生涯病気になることはありませんが、数%の人がATL、HAM、HUを発症します。赤ちゃんへの感染予防のため、栄養法の相談を妊娠中に行います。
キャリアの場合、栄養方法は?
栄養方法は
- 完全人工栄養(完全ミルク)
- 短期間の母乳栄養
- 凍結母乳栄養
の3種類あります。
これまでは、この3種類を提示されましたが、現在は基本的に完全人工栄養が推奨されています。
1.完全人工栄養(完全ミルク)
母乳栄養の場合母子感染は約15〜20%ですが、人工栄養の場合約3%まで低下することがこれまでの研究でわかっています。そのため、完全人工栄養が推奨されていますが、母乳による栄養・免疫などのメリットがないため、母乳栄養を強く希望する場合は②③いずれかの方法となります。
2.短期間の母乳栄養
短期間の母乳栄養が母子感染率を軽減するという報告もありますが、人工栄養と同じ程度かは明らかになっていません。そのため強い母乳希望がある場合は生後3ヶ月(90日)までの母乳栄養にし、その後は人工乳への切り替えが推奨されています。
3.凍結母乳栄養
感染したTリンパ球が凍結・解凍の過程で不活化するため、-20度以下の冷凍庫で24時間以上冷凍し、解凍してからあげる方法ですが、研究の症例が少なく、推奨されている方法ではありません。早産の赤ちゃんや低出生体重児など母乳栄養のメリットが上回る場合にリスクを考慮した上であげることがあります。
クラミジア
クラミジアトラコマチスは、クラミジア感染症を引き起こす細菌で、性行為によって感染します。男性から女性へ性行為によって感染すると子宮頸管炎が起こることがあります。
妊娠中に感染するとどうなる?
妊婦さんが子宮頸管炎になっても約90%の場合、自覚症状がないですが、妊娠中に子宮頸管炎が起こると、産道感染を起こし、赤ちゃんに結膜炎や肺炎の症状が出る可能性があります。
クラミジアの検査はどのようにする?
妊娠30週ごろまでに全ての人を対象に検査を行います。綿棒で子宮頸管の細胞をこすり取り、検査を行い、陽性の場合は産道感染を予防するため、出産までに治療を行います。
クラミジアの治療方法は?
抗菌薬を2〜3週間飲み、治療を行います。出産までに治療を行い、薬を飲んでから3週間ほど経過してから治癒しているかどうかの確認を行います。妊婦さんだけでなく、パートナーの検査と治療も必要です。どちらかの治療が不十分な場合はピンポン感染といい、パートナーから妊婦さん、妊婦さんからパートナーへとお互いに感染を繰り返す可能性があるため、パートナーとともに治療を行うことがとても大切なのです。
もし赤ちゃんが感染したらどうなる?
赤ちゃんがクラミジアに感染した場合、生後1週間前後で症状が出る結膜炎(目やにや目の充血など)や生後1ヶ月前後で発症する肺炎(咳やミルクや母乳の飲みが悪くなる)があります。クラミジア感染の可能性があることを小児科医に伝えると適切な治療が行え、重症化を予防することができます。そのため、小児科医や眼科を受診する場合は、妊娠中にクラミジアに感染したことを必ず伝えるようにしましょう。
梅毒
梅毒は梅毒トレポネーマという細菌感染による性感染症です。性行為により粘膜や皮膚の小さな傷から感染し、さまざまな症状が現れます。
妊娠中に梅毒に感染したらどうなる?
妊婦さんが梅毒に感染すると、胎盤経由で赤ちゃんも感染することがあります。感染力は年数が経つごとに低下していきますが、潜伏梅毒(無症状梅毒)でも赤ちゃんへ感染する可能性があるのです。梅毒の治療をしていなかった場合、妊娠中の初期梅毒は約40%が胎児死亡、新生児死亡に至ると報告があり、また妊娠前の4年間で梅毒に感染した場合、約80%の確率で赤ちゃんへ感染し、先天梅毒の症状がみられるとされています。
先天梅毒は全身のリンパ節の腫れ、肝臓腫大、黄疸、腹水、鼻炎、生まれた後に水疱などの皮膚病変がみられることがあります。また、成長過程で難聴などの症状がみられることもあるでしょう。
妊娠中の梅毒検査はいつする?
妊娠初期に梅毒のスクリーニング検査を行います。検査で陽性と出た場合は、精密検査を行い、確定検査を行います。
妊娠中の梅毒の治療は?
妊娠中に梅毒に感染した場合、抗菌薬を数週間から数ヶ月服用し治療を行います。梅毒は十分に治療を行わなければ再感染する可能性があるため、医師の指示に従い治療を行いましょう。治療はパートナーとともに行わなければ再感染する可能性があるため、パートナーの検査と治療も必ず行なってくださいね。
B型肝炎
B型肝炎は、B型肝炎ウイルスによって起こる肝臓の病気です。感染経路は子宮内感染もしくは産道感染です。
妊娠初期にHBs抗原の検査を行いHBs抗原陽性の場合はHBVキャリアと考えられます。
HBVキャリアの場合どうなる?
HBVキャリアの場合、母子感染予防として、生まれてすぐに抗HBs人免疫グロブリンの投与、出生後すぐ、生後1ヶ月、生後6ヶ月の3回HBワクチンの接種を行います。
母子感染の診断は生後9ヶ月〜12ヶ月を目安にHBs抗原とHBs抗体の検査を行います。HBワクチンは妊娠中でも接種可能です。
妊娠中・出産後の注意点はある?
妊娠中は抗体の確認とワクチン接種が必要です。出産後は母乳感染を起こすものではないので、母乳栄養を希望している場合は、禁止にする必要はありません。HBVキャリア妊婦のパートナーに免疫がない場合は、HBVワクチンの接種が推奨されています。母子感染予防のためのワクチン接種は健康保険給付の対象になります。
C型肝炎
C型肝炎は子宮内感染もしくは産道感染の可能性があります。症状が特に出ない場合もありますが、感染した場合は発熱、黄疸、全身倦怠感の症状が出ることがあります。妊娠初期のスクリーニング検査で母体のウイルス量が多い場合、母子感染の確率が高くなります。
妊娠中の注意点は?
C型肝炎はワクチンでの予防はできません。そのため、妊婦さんの健康管理をなるべく早い段階から行う必要があります。HCV抗体検査で陽性の場合は、HCV-RNA定量検査と肝炎検査を行い、過去の感染かウイルスが体内にある状態かどちらかを確認します。この検査で陰性となった場合は、過去の感染を現しているため、母子感染の心配はありません。陽性となった場合は母子感染のリスクがあるため、肝機能を確認し内科医の指導のもと健康管理を行い、必要に応じて治療が必要になります。
出産方法は?
母子感染予防のために帝王切開を選択する必要はありません。ただ、母体のウイルス量が多い場合、母子感染の減少の可能性を説明し、妊婦や家族の意思を尊重し、分娩方法について検討する場合もあります。
授乳はしてもいい?
出産後に授乳を禁止する必要はありませんが、乳頭が切れていて出血している場合は授乳を一時的に中止することが推奨されています。
B群溶血性レンサ球菌
B群溶血性レンサ球菌(GBS)は赤ちゃんに重症な感染症を引き起こす菌で、生後6日目までに起こる早発型と生後7〜89日目までに起こる遅発型、生後3ヶ月目以降に起こる超遅発型の3種類あります。
GBSは妊婦の10〜20%が持っていると言われていて、尿中にも約2〜4%程度認められています。早発型は主に肛門や膣にある菌から出産時に産道を通ることで感染する産道感染で、まれに胎内感染を起こしている場合もあります。遅発型は母乳からの感染など水平感染が多いと言われています。
早発型の初期症状は呼吸器症状や発熱が多く、重症になると敗血症や髄膜炎を引き起こすこともあるのです。
予防するためにはどうする?
GBS感染を予防するために、日本産婦人科学会では以下のようにスクリーニングを行うことが推奨されています。
- 妊娠35週〜37週にGBS保菌検査を行う
- GBSを保菌している、上の子がGBS感染症の場合は、ペニシリン系抗菌薬の投与を行う
赤ちゃんが感染したらどのような症状が出る?
生まれてすぐの赤ちゃんが感染した場合、どのような症状が出るのかと不安ですよね。感染した場合みられる症状は以下のとおりです。
- なんとなく元気がない
- 皮膚の色があまりよくない
- 母乳やミルクの飲みが悪い
- 体温が安定しない(発熱や低体温)
このような症状がみられる場合は小児科医に相談しましょう。その他にもなんとなく気になるなという場合は、医師に相談してみてくださいね。
水痘(水ぼうそう)
水痘は水痘・帯状疱疹ウイルスの感染が原因です。感染力が強く、飛沫感染、空気感染、水痘の接触感染によって感染します。感染してから症状が出現するまではおおよそ2週間程度です。
水痘の症状は?
感染すると、発熱、発疹、倦怠感、かゆみが現れます。発疹が赤くなって広がり、その後徐々に乾燥(痂皮化)します。小児は軽症で自然に治癒しますが、大人や妊婦がかかると症状が強く出ることが多いです。
妊娠中に水痘になるとどうなる?治療は?
多くの人が抗体を持っているため、妊婦さんの感染はあまり多くありません。ただ、妊娠中に感染すると、高熱や水痘の症状が強く出て、肺炎などの合併症が起こることもあります。妊娠後期に感染すると特に重症化しやすいとの報告もあり、妊娠中に感染した場合は治療薬の服用を行います。
赤ちゃんへの影響はある?
妊婦さんが水痘に感染すると、胎盤を経由し赤ちゃんも感染することがあります。感染時期により皮膚の萎縮、手足の低形成、目の異常、中枢神経系の異常などさまざまな症状があらわれる可能性があります。
感染予防はある?気をつけることは?
水痘にかかったことのない場合、抗体がない場合は以下の点に注意しましょう。
- 人混みを避ける
- 手洗いうがいを十分に
- 発疹がある人との接触を避ける
- 出産後すぐにワクチンを接種し、2ヶ月避妊する
性器ヘルペス
単純ヘルペスウイルスが原因で起こる性感染症です。性器やその周辺に数個〜無数の水疱ができ、強い痛みやリンパ節の腫れ、発熱があらわれる場合もありますが、無症状のこともあります。一度感染すると知覚神経節に潜伏し、再発します。
妊娠中に感染するとどうなる?
妊婦さんが感染すると、出産時に産道感染を起こすことがあります。妊娠中に初めて性器ヘルペスに感染した場合は、抗ウイルス薬を塗って、治療を行います。出産時に初めて感染がわかった場合は、帝王切開になることもありますが、再感染の場合は、産道感染の確率が低いため、経膣分娩を選択する施設もあるようです。
赤ちゃんが感染するとどうなる?
新生児ヘルペスは減少傾向にありますが、感染した場合、手や口などの一部に水疱などの症状がみられる「限局型」と肺炎や脳炎などの内臓障害を伴う「全身型」があります。赤ちゃんに感染した場合抗生剤の治療を行い、数週間〜数ヶ月経過をみながら治療を行います。
サイトメガロウイルス
サイトメガロウイルスは、多くの人が幼児期に感染し、症状が出ないまま抗体を持っていることが多いです。全妊婦のうち、約70%が抗体を持っていると言われています。しかし、再感染したり、何らかの原因で体内のウイルスが活性化されると、さまざまな症状が現れます。
妊娠中に感染するとどうなる?
妊娠中に初めてサイトメガロウイルスに感染すると、胎盤を通して、赤ちゃんへ感染することがあります。また、まれですが、体の中にあったサイトメガロウイルスが、妊娠中に体内で活性化し、胎盤を通して赤ちゃんに感染してしまうこともあります。
赤ちゃんが感染するとどうなる?
赤ちゃんが感染すると、低体重や脳室拡大、難聴、肝機能異常などさまざまな症状が現れます。また、生まれたときに無症状でも、成長過程で難聴や精神発達の遅れなど神経学的後遺症がみられることもあります。
感染予防方法はある?気をつけることは?
サイトメガロウイルスはよくあるウイルスで特に小さな子どもや赤ちゃんの唾液や尿に多く排出されます。そのため、小さな子どもがいたり、よく接したりする妊婦さんは以下の点に注意しましょう。
- 子どもの食べ残しを食べない
- 食器を使いまわしたり、共有しない
- 尿や便に直接触れない、触れてしまった場合はよく手を洗う
りんご病(パルボB19)
ヒトパルボウイルスB19は通称「りんご病」と言われ、飛沫感染により感染します。感染すると体や顔、腕や足、主にほほが赤くなります。小児期に多い感染症です。
妊娠中に感染するとどうなる?
妊娠中に感染すると初期では流産の可能性があります。また、赤ちゃんに感染すると赤ちゃんが貧血になり、まれに貧血が重度になると胎児水腫(赤ちゃんの胸やお腹に水がたまり、全身がむくむ状態)になることもあります。治療方法は確立されていないので、子どもと接する機会の多い方は、接触を避けるようにしましょう。
まとめ
妊娠中は普段感染しないような感染症にかかりやすくなりますし、赤ちゃんへの影響が大きい感染症もあります。妊娠前にワクチンで予防できるものは予防し、ワクチン接種できないものについては感染予防に努めましょう。
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