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切迫早産の原因や症状、治療法や過ごし方について。早産との違いも解説

医療法人みらいグループ
切迫早産の原因や症状、治療法や過ごし方について。早産との違いも解説

切迫早産とは、早産になりかけている状態を言います。程度の差はありますが、切迫早産を経験する妊婦さんは多いと言われています。
切迫早産は、適切に治療・処置を行えば早産にならないことも多々あります。

ここでは、切迫早産の原因や症状、治療法や過ごし方についてご紹介します。

切迫早産とは?

切迫早産は文字通り、早産になりかけている状態です。

切迫早産は「妊娠22週0日〜36週6日までの妊娠期間中に、規則的な子宮収縮(お腹の張り)を認め、かつ子宮頸管の開大度・展退度に進行が認められる場合、あるいは初診の診察時に子宮頸管の開大が2㎝以上している場合で、早産となる危険性が高い状態」と定義されています。

つまり、お腹の張りが頻回に起こり、子宮口が広がり赤ちゃんが出てきてしまいそうな状態なのです。

切迫早産と早産の違いは?

早産とは「妊娠22週〜37週未満までの出産」です。
切迫早産は、早産になる手前の状態を言います。

切迫早産の原因は?

切迫早産の原因は主に感染、子宮頸管無力症と考えられています。

感染

切迫早産の原因として、1番多いのが感染です。
膣や子宮内に感染が起こり、その炎症が子宮内まで広がり、子宮内感染が起こると「絨毛膜羊膜炎」になります。
膣や子宮は本来であれば感染しないよう、防御機能が働いていますが、何らかの原因により防御機能が作用しないと、感染につながってしまうのです。
なぜ防御機能が作用しないことがあるのかは、わかっていない部分もあります。

子宮頸管無力症

子宮の入り口である子宮頸管は通常閉じており、どんどん大きくなる赤ちゃんを支える役割があります。通常は長く、硬く閉じていますが、子宮頸管無力症は、子宮頸管がやわらかくゆるくなっていて、赤ちゃんを支える力が弱くなっている状態です。
子宮頸管無力症の方は、体質と子宮頸管の手術をしているかなどが関係しています。
お腹の張りや出血といった症状が出にくく、自分では気づかないうちに子宮頸管が開いてしまうのです。

どんな人が切迫早産になりやすい?

切迫早産になりやすいリスク因子があります。

  • これまでの妊娠で早産や切迫早産になった
  • 子宮頸部の手術歴
  • 多胎妊娠
  • 痩せや肥満
  • ストレスや長時間労働
  • 喫煙
  • 子宮奇形
  • 糖尿病や高血圧など基礎疾患がある

これまでの妊娠で早産や切迫早産になった

これまでの妊娠で早産や切迫早産になった場合、次回の妊娠時に切迫早産になる確率が高いと言われています。

子宮頸部の手術歴

子宮頸がんの治療で子宮頸部円錐切除術を行うと、子宮頸管が短くなります。
そのため、物理的に子宮頸部が短く、赤ちゃんがどんどん大きくなると、支えることが難しくなり、切迫早産になりやすいと言われています。

多胎妊娠

2人以上の妊娠を多胎妊娠と言いますが、多胎妊娠の場合、急激に大きくなる赤ちゃんと子宮を支えることが難しく、切迫早産になりやすいです。
子宮が大きくなると子宮が収縮しやすくなることも切迫早産につながります。

痩せや極度の肥満

妊娠前の痩せは低栄養状態のため、お腹の中の赤ちゃんも栄養不足から発育に影響が出ると言われています。
赤ちゃんの発育に影響が出ると、「副腎皮質刺激ホルモン」と言うホルモンが分泌されます。副腎皮質刺激ホルモンは、子宮収縮を引き起こす「オキシトシン」のホルモンの働きを強くさせる作用があるため、お腹の張りが増え、切迫早産になってしまうのです。

ストレスや長時間労働

妊娠中はホルモンバランスの変化から、ストレスを感じやすくなったり、イライラしやすくなったります。
ストレスは交感神経を活発にさせます。交感神経が活発になると、血管収縮が起こり、血流が悪くなることで子宮収縮が起こり切迫早産につながります。
また、血流が悪くなると赤ちゃんへ酸素が十分に送れず、低酸素の状態になってしまいます。

喫煙

タバコに含まれるニコチンは、血管収縮作用があり、子宮収縮につながります。喫煙していると、早産になる確率は1.4〜1.5倍と言われています。
また、タバコに含まれる有害物質は血流を悪くするため、赤ちゃんに十分に栄養や酸素が行かなくなってしまいます。妊娠したらタバコは絶対にやめましょう。

子宮奇形

双角子宮など子宮奇形がある場合や子宮筋腫がある場合、子宮収縮が起こりやすく、切迫早産や早産になりやすいと言われています。

糖尿病や高血圧など基礎疾患がある

糖尿病がある場合、赤ちゃんも高血糖になりやすく、尿量が増えることから、羊水過多になりやすいです。
羊水過多は通常より羊水の量が多いことを言います。羊水過多になると、子宮の容量が増えることでお腹の張りが増えやすく、切迫早産につながりやすいのです。
他にも高血圧や妊娠高血圧症候群などがある場合、血流が悪くなることから子宮収縮が起こりやすく、切迫早産につながることが多いでしょう。

切迫早産の症状は?

切迫早産の症状は以下の3つです。

  • お腹の張りや痛み
  • 性器出血
  • 陣痛の前の破水

お腹の張りや痛み

切迫早産の代表的な症状がお腹の張りや痛みです。
お腹の張りや痛みは子宮収縮により起こり、お腹の張りが頻回に規則的に起こることにより切迫早産につながります。
安静にしていると落ち着く程度の張りであれば、大きな心配はいりませんが、安静にしてもお腹の張りが変わらない、もしくは増えるようであれば、受診が必要でしょう。

性器出血

出血もよく起こる症状です。
お腹の張りや痛みの自覚がなくても、出血することもあります。
出血の量や程度もさまざまで、切迫早産につながるものからそうでないものまでありますが、赤色の性器出血が出る場合は受診の相談をしましょう。

陣痛前の破水

陣痛が起こる前に破水することを「前期破水」と言いますが、前期破水が起きると24時間以内に約50%、1週間以内に約80%の確率で早産になると言われています。
前期破水した時期が、妊娠34週以前の場合、妊娠継続のために処置をします。
破水すると、赤ちゃんは外の世界とつながり、感染のリスクがあるため、抗菌薬などを使用する場合が多いです。

切迫早産の治療法は?

切迫早産の治療は、基本的に安静にすることが1番です。

安静にしてもおさまらなければ薬を使って治療する

安静にしてもお腹の張りがおさまらない場合は、お腹の張りを抑える薬(子宮収縮抑制薬)を使用し、治療をします。子宮収縮抑制薬は、内服薬と点滴治療どちらもあります。
内服薬を服用し、外来通院で様子をみられる場合もありますが、それでも難しい場合は、入院治療を行い、お腹の張りを抑える点滴をして安静にする治療が行われます。

子宮頸管無力症の治療は?

子宮頸管無力症の治療は「子宮頸管縫縮術」と呼ばれる手術を行うことがあります。
子宮頸管縫縮術は子宮頸管を糸でしばり、子宮口が開かないようにする方法です。
早産歴がある場合や多胎妊娠で予防的に手術をすることが多く、一般的に妊娠12週〜16週の間に行われます。

切迫早産の場合、過ごし方は?

切迫早産の場合、基本的には安静が必要になります。切迫早産と診断されたら、自宅で安静にしてください。家事などは家族のサポートを得るようにし、なるべく安静に過ごせるようにしましょう。

どの程度動いてもいい?

切迫早産と言っても、症状や程度は人によりさまざまで個人差があります。
絶対安静と言われていなければ簡単な家事なら行えますが、買い物で重い荷物を持ったり、掃除をしたり、料理で長時間立ちっぱなしになったりすることは避けましょう。
運動は避け、外出も短時間で最低限にしましょう。車の運転も避けることをおすすめします。

生活の注意点はある?

切迫早産になると安静のストレスから食事量が増えることがあります。他の病気の治療がなければ、基本的に食事の制限はありませんが、食べ過ぎに注意しましょう。
食べ過ぎは急激な体重増加につながります。急激な体重増加は妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群、巨大児など他のリスクが高くなります。必要なカロリー量は妊娠時期により異なるため、適切なカロリー摂取を心がけましょう。

切迫早産は予防できる?

切迫早産を予防できるのであれば、予防したいと考える方もいるでしょう。切迫早産の原因を回避することで、予防できる場合もあります。
具体的には、以下のような生活を心がけましょう。

  • 重たい荷物を持たない
  • 働きすぎない
  • 妊娠中は禁煙する
  • 栄養バランスのとれた食事を心掛け、適切な体重管理を行う
  • 十分な睡眠をとり、規則正しい生活を送る
  • 性行為をする場合は、コンドームを使用する

まとめ

切迫早産と言われると、赤ちゃんはどうなってしまうのかと不安に感じる方もいるでしょう。
1番の治療は安静にすることです。切迫早産と言われたら、安静にして過ごしましょう。
切迫早産を絶対に予防することは難しいですが、なるべく防ぐためにも妊娠中は無理のない生活を心がけてくださいね。

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この記事の監修
エナみらいグループ理事長 石渡 瑞穂
石渡 瑞穂
エナみらいグループ理事長
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