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自然分娩・無痛分娩・帝王切開の違いや特徴は?出産方法の基礎知識

医療法人みらいグループ
自然分娩・無痛分娩・帝王切開の違いや特徴は?出産方法の基礎知識

妊娠すると嬉しい気持ちと同時にママの頭に過ぎるのは出産への不安ではないでしょうか。近年出産に対して主体的な考え方を持つ「アクティブバース」が注目されており「どんな風に出産しようかな」と出産方法を選ぶママも増えています。

この記事では、自然分娩・無痛分娩・帝王切開など、出産方法の種類や違いなどを紹介しています。前向きに取り組みたいと思える出産方法を探している人や、出産方法についてさまざまなケースを知っておきたいという人は、参考にしてみてください。

出産方法の種類

出産方法の種類

出産方法は大きく分けて「経膣分娩」と「帝王切開」の2つに分けられます。
更に経膣分娩は「自然分娩」と「無痛(和痛)分娩など医療介入による分娩」に分けられます。

それぞれ詳しく紹介していきます。

自然分娩

医療介入をせずに行う経腟分娩を自然分娩と言います。陣痛や腹圧など、母体の持つ力で胎児を分娩することで、医療の介入しない出産のほとんどが自然分娩に分類されます。
当院でも自然分娩を推奨しており、お母さんの持っている力を存分に発揮できるようにしっかりとお手伝いいたします。

基本的に医療介入は行いませんが、会陰切開などは行うことがあります。「フリースタイル出産」「ソフロロジー式分娩法」「ラマーズ法」「水中出産」なども自然分娩に含まれる出産方法です。

フリースタイル出産

フリースタイル出産は、自然のまま好きな体勢で出産することです。立ったまま、座った状態、四つ這いなど、妊婦自身が楽にいきめる体勢で出産をします。

フリースタイル出産は、姿勢によってベッドでの分娩が困難になります。そのため、和室の分娩室を完備してる産院などを選ぶのが良いでしょう。また、複雑な体勢で胎児の娩出を介助する必要があるため、助産師側もフリースタイル出産による介助経験豊富な方が求められます。

フリースタイル出産を推奨していて、分娩例の多い産院を選ぶのがおすすめです。

ソフロロジー式分娩法

ソフロロジー式分娩法は、イメージトレーニングや呼吸法、エクササイズによって出産に対する意識を変え、リラックスして痛みを逃す分娩法です。ソフロロジーの考え方は1960年にスペインで生まれたと言われており、出産に限らず、精神科、消化器科、歯科などさまざまな医療分野で取り入れられています。

ソフロロジー式は環境に左右されずに行える出産方法ですが、取り組み方などを詳しく学んでいる産院で指導を受けることが推奨されています。分娩予定の産院でソフロロジー式分娩法に詳しいスタッフが在籍しているか聞いてみるのもおすすめです。

また、ソフロロジー式分娩法に詳しいスタッフが在籍していない場合は、書籍などで方法を調べることもできます。主に、出産する母親自身の取り組みなので、自分で調べて実践してもよいでしょう。

ラマーズ法

ラマーズ法はフランスの産婦人科医によって提唱された分娩方法で、日本では1960年代頃に伝えられたと言われています。

ラマーズ法では痛みを逃しやすい呼吸方法を実践して分娩をスムーズに進めます。日本でも「ヒッ、ヒッ、フー」の呼吸方法が有名です。ソフロロジー式分娩法と同じく場所を問わずに行える出産方法で、比較的簡単に行うことができるでしょう。

しかし、陣痛の痛みでパニックになり「いざ出産の時になると焦ってラマーズ法ができなかった」という人も少なくありません。出産時に慌てず呼吸法を実践できるよう、母親学級や両親学級などでラマーズ法の練習を行うこともあります。

水中出産

水中出産とは、水中で出産を行うことです。陣痛が始まったら水中出産用の浴槽に浸かり、36~37度のぬるま湯のなかで出産します。水中にいることで浮力がかかりリラックスしやすいため、痛みが和らぐ効果が期待されます。

海外で特に人気の出産方法ですが、日本ではあまり普及しておらず対応できる産院は限られています。また、日本における水中出産はガイドラインなども定められていません。水中出産を希望する場合、まずは口コミなどを参考にして信頼できる産院探しから始める必要があるでしょう。

無痛(和痛)分娩

無痛分娩は、陣痛時に硬膜外麻酔を施し陣痛や分娩時の痛みを軽減させる分娩方法です。陣痛の痛みが和らぐことで、パニックにならず落ち着いて出産できるほか、痛みが少ないことから体力的・精神的負担を抑えられると言われています。

しかし、無痛分娩でも多少の痛みは感じるほか、陣痛から分娩までの進行が早い場合、麻酔処置が間に合わないケースもよく聞かれます。

麻酔を行うことにより、陣痛が遠のいたり、稀に重篤な副作用が起こるケースも聞かれるため、さまざまな情報を収集したうえで検討するのがおすすめです。

※当院では、無痛(和痛)分娩は行っておりません

帝王切開を含む医療が介入する分娩

母子にリスクが考えられる場合、医療介入による分娩が行われます。医療が介入する分娩で有名なのが「帝王切開」です。これ以外にも「計画分娩(誘発分娩)」「吸引分娩」「鉗子分娩」など、医療が介入した経腟分娩などもあります。

帝王切開

帝王切開は母子いずれか、もしくは両方に何らかの問題があり経腟分娩が難しいとされる場合に行う手術です。麻酔を行って腹部と子宮を切開し、胎児を取り出します。

逆子や双子、三つ子などの多胎児出産の際にも、帝王切開が行われます。帝王切開には、事前に経腟分娩が難しいと判断された場合に予定して行う予定帝王切開と、経腟分娩中に何らかのトラブルが起こり緊急性を持って行われる緊急帝王切開があります。

帝王切開の詳細はこちら

計画分娩(誘発分娩)

計画分娩とは人工的に陣痛を誘発して行う分娩方法です。

主に、陣痛誘発剤やバルーンなどを使って人工的に陣痛を誘発する方法を誘発分娩と呼び、正産期が過ぎても陣痛が起こらず妊娠の継続が難しい場合に用いられることが多い方法です。

吸引分娩

吸引分娩は、何らかの問題で陣痛が弱まり分娩が進まず、尚かつ胎児を迅速に娩出することが求められる場合に行う医療介入です。

吸引分娩では赤ちゃんの頭に吸引カップを装着して、吸引圧をかけながら引っ張り分娩をサポートします。

鉗子(かんし)分娩

鉗子分娩とは、吸引分娩と同じく何らかの問題で陣痛が弱まり分娩が進まず、尚且つ胎児を迅速に娩出することが求められる場合に行う医療介入です。

大きなスプーンに似た鉗子で赤ちゃんの頭を挟み、引っ張り出しながら分娩をサポートします。

出産する場所による違い

出産する場所による違い
出産方法の種類の他に、出産する場所によっても違いがあります。一般的な産院での出産は、陣痛室や分娩室などを利用することが多いでしょう。その他、自宅で出産をする「自宅出産」や産院内の特別な分娩室で出産する「LDR出産」などがあります。

自宅出産

自宅で助産師の介助を受けて行う出産を自宅出産と言います。助産院などに依頼して、陣痛が始まると共に助産師に自宅を訪問してもらって行う出産方法です。

家族が立ち会いやすいほか、病院までの移動などの負担は小さいものの、妊娠経過に問題がなく経腟分娩可能と判断された人しか選ぶことができません。

また、緊急時には医療を受けるまでのタイムラグが発生してしまうリスクもあります。

LDR出産

LDRは、陣痛室と分娩室が一体化した出産用の部屋です。陣痛室から分娩室への移動が不要なため、身体的な負担を抑えることができます。室内に医療機器なども設置されているケースが多く、医療介入にも対応可能です。

ただし、帝王切開を予定している人は利用できず、緊急帝王切開が必要になった場合にもLDRを移動しての出産となるケースがあります。

選べる出産方法は自然分娩or無痛分娩or計画分娩のみ

出産方法について知ると「こんなにたくさんの種類があるんだ」と驚く人も多いでしょう。近年アクティブバースという言葉も注目されており、妊娠や出産に主体的に取り組む妊婦も増えています。

多くの出産方法から、どの方法を選ぶべきか悩む人も少なくありません。

基本的に、健康な妊婦が選べる出産方法は自然分娩もしくは無痛分娩、計画分娩のみです。
計画分娩は希望の日に薬を使い、人工的に陣痛を起こします。

医療介入は、医師によって必要と判断された時にしか行うことができません。稀に、「陣痛や分娩が怖いから、予定帝王切開で赤ちゃんを産みたい」なんて声を聞くこともありますが、基本的に健康で母子共に問題のない場合に帝王切開が行われることはありません。

出産方法はいつ決めるの?

いつまでに決めればよいか明確な決まりはありませんが、産院を決めた時期については初診で妊娠がわかってすぐ決める方も多いです。人気の産院は予約がすぐに埋まってしまうこともあり、大体ですが妊娠3ヶ月までに決める人が多い印象です。

無痛分娩や水中分娩、フリースタイル出産のような、特別な医療機器や施設、分娩スペースを必要とする出産方法を選ぶ場合は、これらの分娩方法に対応してくれる産院を探す必要があります。
最初に受診した産院で希望の出産方法を取り扱っていない場合には、なるべくはやく対応可能な産院を探しておくのがベストです。

一方、ソフロロジー式やラマーズ法のような通常の分娩スタイルでも取り入れられる方法であれば、特に産院選びをする必要なく医師や助産師などに相談してみるとよいでしょう。

楽な出産方法はどれ?

出産方法を選ぶ際に、「できるだけ楽に産める方法がいい」という人も多いでしょう。しかし、痛みの感じ方が人によって違うように、出産が楽だと感じるのも人によって全く違います。

ソフロロジー式で楽に出産ができたという人もいれば、ソフロロジー式をしても陣痛が辛かったという人もいるでしょう。ラマーズ法や無痛分娩でも同じです。

出産方法を選ぶ時は「楽な方法」ではなく「自分が主体的に取り組みたいと思える方法」を選んでみてはいかがでしょうか。前向きに陣痛や出産と向き合うことで、一生の思い出となる出産を迎えられる筈です。

先輩ママはどれを選んだの?各出産方法の分娩数の割合

各出産方法の分娩数の割合
2021年に行われた、とある出産方法の希望に関するアンケートによると、全体の約53%のママは自然分娩を希望しています。特に分娩方法を意識せず、自然な流れに身を任せて出産したいと考える人が多いようです。
一方、全体の9%は無痛分娩を希望しており、なかには「選べるなら帝王切開がいい」という回答もあったそうです。

厚生労働省によって行われた調査によると2020年の帝王切開率は、一般病院で27.4%、診療所で14.7%、全体では21.6%という結果が出ています。

ママの希望に関わらず約5人に1人は帝王切開となる結果です。出産の最終目的は母子ともに健康に出産を終えることです。そのためには、場合に応じた医療介入が必要となるケースもあるでしょう。出産方法を主体的に考えつつも、頭の隅には「希望通りに進められない場合もある」ということを意識しておいた方が良さそうですね。

参考:厚生労働省 令和2(2020)年 医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況

まとめ

出産方法について紹介してきました。ママと赤ちゃんにとって人生の大きなイベントとなる出産。
出産が今後良い思い出となるよう、自分自身の考えをまとめたりパートナーや家族と話し合って出産方法について考えてみてはいかがでしょうか。

当院では、自然分娩を基本とし、お母さんと赤ちゃんが安心安全に出産を迎えられるようサポートしております。医療的な介入が必要な場合は、それぞれの状況に迅速に対応し、安全で適切な医療を提供いたします。お気軽にご相談ください。

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この記事の監修
エナみらいグループ理事長 石渡 瑞穂
石渡 瑞穂
エナみらいグループ理事長
あなたと家族の”みらい”に向けて、明るい笑顔と真心、そして安心の医療体制で、安らぎと感動を提供いたします。産科・婦人科にかかわる心配事は、程度にかかわらず何でも「札幌みらいクリニック」までご相談にいらしてください。