妊娠初期に多くのママが経験する「つわり」。ひとくちに「つわり」といっても症状はさまざまで、人によって感じ方やつらさは大きく異なります。
なかでも、「お腹が空くと気持ち悪くなる」「何か食べていないとつらい」といった症状が続くのが「食べづわり」です。食べれば楽になるものの、食べ過ぎてしまったり、何を食べたらいいのか分からなくなったりと、悩む方も多いのではないでしょうか。
この記事では、食べづわりの特徴や原因をわかりやすく解説しながら、症状を少しでも和らげるための工夫やおすすめの食べ物をご紹介します。
現在つらい思いをしているママはもちろん、食べづわりに悩むパートナーを支えたいパパの方も、ぜひ参考にしてみてください。
食べづわりとは
食べづわりとは、妊娠中にみられるつわり症状の一種です。空腹になると吐き気や気持ち悪さを感じやすく、何かを食べている間は症状が和らぐことから「食べづわり」と呼ばれています。
つわりの原因については、妊娠にともなうホルモンバランスの変化や自律神経の乱れなどが関係していると考えられていますが、医学的にはまだはっきりと解明されていません。
つわりにはほかにも、「よだれづわり」「吐きづわり」「においづわり」など、症状やきっかけによってさまざまな呼び方があります。なかには、これらの症状がいくつか重なって現れることもあります。
また、食事や水分がほとんど摂れなくなるほど症状が重い場合には、「妊娠悪阻(にんしんおそ)」と診断され、点滴などの医療的な対応が必要になることもあります。
食べづわりはいつからいつまで続く?
つわりが始まる時期や終わる時期には個人差があり、早い人では妊娠4週頃から症状を感じ始めることがあります。なかには、症状が長引き、出産まで続くケースもあります。
一般的には、妊娠5週頃からつわりの症状が出始め、妊娠12〜16週頃には落ち着いてくる人が多いとされています。妊娠8〜10週頃がピークといわれ、この時期につわりのつらさを強く感じるママが多いです。
食べづわりも、ほかのつわりと同様に、妊娠12〜16週頃に症状が和らぐケースが多い傾向にあります。ただし、症状の出方や続く期間には個人差があるため、「自分だけ長いのかな?」と不安になりすぎないことも大切です。
食べづわりの特徴

続いては、食べづわりの主な特徴をご紹介します。「これって食べづわりなのかな?」と感じている方は、当てはまるものがあるかチェックしてみてください。
空腹になると吐き気がする
食べづわりのママに多くみられるのが、空腹になると吐き気を感じるという症状です。ある程度お腹が満たされている間は比較的落ち着いているものの、時間が空いて空腹になると、急に気持ち悪くなるケースが多いようです。
吐き気だけでおさまる人もいれば、嘔吐してしまう人もおり、症状の強さには個人差があります。
食べると吐き気が和らぐ
食べづわりの場合、吐き気を感じていても、何か食べ物や飲み物を口にすると症状が和らぐことが多いのも特徴です。
体調不良による吐き気とは異なり、食欲自体はそれほど落ちないことも多く、「気持ち悪くなる前に少し食べる」「気持ち悪くなったらすぐ食べられるものを口にする」といった形で対処しているママも少なくありません。
食べづわりの対処方法

食べづわりの症状がつらいときは、以下のような工夫で吐き気が和らぐことがあります。無理のない範囲で取り入れてみてください。
食事をこまめに食べる
食べづわりは、空腹になると吐き気を感じやすいのが特徴です。そのため、1回の食事量を少なめにして、食事や間食の回数を増やす方法がおすすめです。
たとえば、朝食・間食・昼食・間食・夕食・間食といったように、こまめに口にすることで、空腹の時間をできるだけ作らないようにしましょう。
すぐに食べられるものを持ち歩く
食べづわりの場合、吐き気を感じても、少し食べることで症状が落ち着くことがあります。そのため、外出時もすぐに食べられるものを手元に用意しておくと安心です。
アメやガム、グミ、クラッカーなど、ポケットやバッグに入れておけるものを常備しておき、気持ち悪さを感じたらすぐに口にできるようにしておきましょう。
満腹になりすぎないよう注意する
食べづわりの場合、吐き気を感じるのが不快だったり空腹になるのが怖くなったりして、普段よりも食べる量を増やしてしまう人も少なくありません。しかし、食べづわりの場合、満腹になることでかえって吐き気が強くなることもあります。
また、一度にたくさん食べると、胸焼けのような不快感が長引いてしまうこともあります。
食事の際は「少し物足りないかな?」と感じるくらいで止めるよう意識し、満腹になるまで食べないように心がけましょう。
食べづわりの時におすすめの食べ物
つわりの時期は、「これなら食べられる」「これはどうしても無理」と、食べられるものが限られてしまうママも少なくありません。基本的には、その時に無理なく食べられるものを優先するのがおすすめです。
一方で、「何を食べても気持ち悪い」「何でも食べられるからこそ、何を選べばいいのか分からない」と悩むこともありますよね。ここでは、食べづわりのときに比較的取り入れやすい食べ物のポイントをご紹介します。
胃に優しい食べ物
食べづわりで吐き気や嘔吐がある場合、胃が疲れていることも多いため、消化しやすく負担の少ない食べ物を選ぶと安心です。
| 消化しやすいもの | おかゆ、うどん、そうめん、豆腐、納豆、鶏肉(ささみ、胸肉)、魚(たら、鮭、鯛)、半熟卵など |
| 加熱することで消化しやすくなるもの | 大根、白菜、キャベツ、玉ねぎ、じゃがいも、里芋、ほうれん草、にんじんなど |
| 消化を助ける栄養を含むもの | ヨーグルト、りんご、バナナ、キウイ、桃、グレープフルーツ、みかんなど |
脂っこいものや刺激の強いものは避け、食物繊維が少なめのものを選ぶと胃への負担を抑えやすくなります。
食物繊維が多い野菜でも、加熱することで消化しやすくなる点も覚えておくとよいでしょう。
口当たりのよい食べ物
食べられるものが限られているときは、口当たりのよさを意識して選ぶのもひとつの方法です。
冷たいものや酸味のあるものは比較的食べやすいと感じるママも多い一方で、温かいものの方が落ち着く場合や、甘いものが欲しくなるケースもあります。食べづわりの感じ方には個人差が大きいため、「温度」「食感」「味」の中で、自分が食べやすい共通点を見つけてみるとよいでしょう。
冷たくてのど越しのよいゼリーや豆腐、ヨーグルトは、無理なく食べやすいと感じる人が多い食品です。
また、酸味のある食べ物では、柑橘類(みかん・グレープフルーツ)や梅干し、トマトなどで食べづわりを乗り切ったという声もよく聞かれます。
低カロリーな食べ物
こまめに食事をとっていると、体重増加が気になるママもいるかもしれません。妊娠中はある程度の体重増加は自然なことなので、適正範囲であれば過度に心配する必要はありません。
ただし、急激に体重が増えている場合や、もともと体重が気になる方は、低カロリーな食品を上手に取り入れるのもおすすめです。
蒟蒻ゼリーは、のど越しがよく持ち運びもしやすいため、食べづわりの強い味方です。
また、ささみや豆腐などは消化がよく、良質なたんぱく質を無理なく摂取できます。
食べづわり中の栄養バランスは「余裕が出てから」でもOK
妊娠中は「赤ちゃんのために、きちんと栄養をとらなければ」と不安になるママも多いかもしれません。
ただ、つわりの時期は無理をしないことが何より大切です。
つわりがつらい時期は、栄養バランスよりも「食べられるかどうか」を優先して問題ありません。揚げ物しか食べられない、同じものばかり食べてしまうというケースも珍しくありませんが、過度に心配しなくて大丈夫です。
妊娠初期の赤ちゃんは、まだ胎盤が完成しておらず、受精時に蓄えた栄養を使って成長しています。そのため、つわりで食事量が減ったり、栄養が偏ったりしても、すぐに赤ちゃんへ悪影響が出ることは少ないと考えられています。
まずは食べられるものをしっかり食べて、つらい時期を乗り切りましょう。
少しずつ体調が戻ってきたら、そのタイミングで栄養バランスを意識した食事に切り替えていけば十分です。
一方で、食べられるものに制限がない場合は、早い段階から主食・主菜・副菜を意識した食事を心がけることで、ママ自身の体調管理にもつながります。
食べ物以外で食べづわりに対応するポイント

食べづわりは「食べ方」だけでなく、体の負担や疲れ、ストレスなどが影響してつらさが増すこともあります。食べ物以外でできる対策として、次のポイントも試してみてください。
締め付けの少ない服を選ぶ
吐き気があるときは、胸まわりやお腹まわりの締め付けが少ない服がおすすめです。ゆったりした服に替えるだけでも、圧迫感が減ってラクに感じることがあります。
マタニティウェアは着る期間が限られますが、つわりがつらい時期の快適さを優先して、早めに取り入れてみるのもひとつです。特にマタニティ用の下着は締め付けが少なく、過ごしやすいものが多いです。
できる範囲で安静に過ごす
妊娠初期は、仕事や家事をいつも通り続けて無理をしがちです。疲れを感じる前にこまめに休憩を入れるなど、できる範囲で体を休める時間を確保しましょう。
つわりが強い時期は、職場で妊娠報告のタイミングを迷う方もいますが、体調が崩れたときに休みやすくするためにも、信頼できる上司や同僚に早めに相談しておくと安心です。
ストレスを溜めすぎない
妊娠中は、つわりによる体調不良やホルモンバランスの変化の影響により、気分が不安定になりやすく、ストレスを感じやすい時期でもあります。
近年の研究では、つわりの発症や症状の程度に GDF15(Growth Differentiation Factor 15) というホルモンが関与している可能性が示されています。GDF15はストレスや炎症などにより増加することが知られており、つわりとの関連についても注目されています。
つわりの原因は現在も完全には解明されていませんが、ストレスとつわり症状との関連性については、今後も研究が進められていくと考えられています。
食べづわりもつわりの一種であるため、日常生活の中で過度な負担やストレスを避け、できるだけ心身を休めることが、症状の緩和につながる可能性があります。
【参考】GDF15とつわりの関係について
Nature|GDF15 linked to maternal risk of nausea and vomiting during pregnancy
歯磨きなどで口の中をすっきりさせる
吐き気が続くときは、口の中の不快感が気持ち悪さを強めていることもあります。うがいや歯磨きで口の中をさっぱりさせると、ラクになる場合があります。
また妊娠中は虫歯や歯周病のリスクが上がりやすいので、できる範囲でケアを続けられると安心です。
ただし、つわりの時期は歯ブラシを入れるだけで吐き気が出たり、歯磨き粉のにおいがつらかったりすることもあります。ヘッドが小さい歯ブラシを選んだり、歯磨き粉は無理に使わず水だけで磨いたりなど、体調に合わせて調整してみてください。
食べづわりは太りやすい?体重に気を付けるべき?
食べづわりで食事の回数や量が増えると、「体重が増えすぎないか心配…」と感じるママも多いのではないでしょうか。
妊娠中の体重増加には、妊娠前のBMIをもとにした目安があります。以下は一般的な目安です。
| 妊娠前のBMI | 妊娠中の体重増加目安 |
| 18.5未満の場合(やせ) | 12~15kg |
| 18.5以上25未満(普通) | 10~13kg |
| 25以上30未満(肥満1度) | 7~10kg |
| 30以上(肥満2度) | 上限5kgを目安に個別対応 |
妊娠中の体重増加は、上記のような指標を参考にしながら、無理のない範囲で管理していくことが大切です。
国立成育医療研究センターの公式サイトでは、妊娠週数ごとの体重増加の目安が分かる「体重増加曲線(チャート)」も公開されているので、あわせて参考にしてみてください。
とはいえ、つわりの時期は「食べられるものを、食べられるタイミングで食べる」ことが基本です。
食べづわりの場合、空腹を避けるために食事や間食の回数が増え、体重増加が気になりやすくなります。
しかし、体重が気になるからと無理に食事量を減らしてしまうと、吐き気が強くなったり、嘔吐の回数が増えたりして、かえって体調を崩してしまうこともあります。
まずは日常生活を少しでも快適に過ごすことを優先しましょう。
食べられるものに余裕がある場合は、低カロリーで消化のよいものを選ぶなど、できる範囲で工夫する程度で大丈夫です。
体重増加が急に気になってきた場合や、食べづわりの症状がつらいと感じる場合は、我慢せずに医師へ相談してみてくださいね。
食べづわりの時に注意すべき食べ物はある?
食べづわりの場合、「何か食べること」で吐き気が和らぐことが多いため、基本的には食べられるものを食べることが大切です。ただし、選べる余裕がある場合は、できれば控えておきたい食べ物もあります。
アイスクリーム
アイスクリームは、冷たさや甘さから食べづわりの時に選ばれやすい食べ物です。
一方で、脂肪分や糖分が多く、食べ過ぎると急激な体重増加につながる可能性があります。
絶対に食べてはいけないわけではありませんが、量を控えめにしたり、低カロリータイプを選んだりすると安心です。
ゼリーを凍らせたり、冷凍した果物をスムージーにするなど、冷たさと甘さを楽しめる代わりの食品を取り入れるのもおすすめです。
揚げ物
つわりの時に「これだけは食べられた」という声が多い食べ物のひとつが、フライドポテトです。食べづわりで嘔吐が続くと、体内のナトリウムが低下し、無意識に塩分の多いものを欲することがあります。
ただし、市販のフライドポテトなどは塩分や脂質が多く、むくみや高血圧の原因になることもあります。可能であれば、頻度や量は控えめにしましょう。
どうしても食べたい場合は、冷凍ポテトをトースターで焼くなど、油を使わずに調理し、塩分を調整する工夫をすると負担を減らせます。
非加熱の肉・魚・乳製品
妊娠中は免疫力が低下しやすく、食中毒や感染症にかかりやすい状態です。
そのため、生肉・生魚・非加熱の乳製品などは、できるだけ避けるようにしましょう。
特に注意したいのが、生ハムや非加熱のナチュラルチーズ、生肉、生魚などから感染する可能性があるリステリア菌です。
また、非加熱の肉や乳製品などから感染する可能性があるトキソプラズマにも注意が必要です。
これらの感染症は、お腹の赤ちゃんに影響を及ぼすことがあり、流産や早産、新生児感染症などのリスクにつながる可能性があります。
妊娠中は、十分に加熱された食品を選ぶことを意識しましょう。
まとめ
食べづわりの症状や感じ方には個人差が大きいため、自分に合った対処法を見つけていくことが大切です。
まずは、こまめに食事をとる、すぐに食べられるものを持ち歩くなど、できそうなことから試してみましょう。
少しずつ体調が安定してきたら、食べる内容にも目を向け、急激な体重増加に気をつけながら過ごすのがおすすめです。
妊娠をきっかけに生活が大きく変わり、戸惑いや不安を感じることも多いかと思いますが、まずはつらいつわりの時期を無理せず乗り切ることを目標にしてみてください。
体重の増え方や食べづわりへの対処について不安がある場合は、ひとりで抱え込まず、医師に相談することも大切です。