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前置胎盤とは?原因や治し方、日常生活の過ごし方、出産方法について

医療法人みらいグループ
痛くて前のめりになる妊婦

胎盤はお腹の中でママから赤ちゃんへ酸素や栄養を送るとても大切な臓器です。胎盤の位置異常で起こる「前置胎盤」は、妊娠中気をつけなければならないことがたくさんあります。
この記事では、前置胎盤とはどのような状態なのか、日常生活の注意点などについてご紹介します。

胎盤の働き

胎盤はママと赤ちゃんをつなぐ大切な役割があります。胎盤を通してママから赤ちゃんへ必要な栄養や酸素を送っています。
妊娠中赤ちゃんが成長しますが、胎盤も妊娠経過の中で大きくなり、出産時には平均500g程度の大きさになっています。

前置胎盤はどんな状態?

妊婦の解剖図

通常、胎盤の位置は子宮の出口(内子宮口)からある程度離れた位置にあります。しかし、前置胎盤の場合は、子宮の出口を完全に覆うような位置にあります。

前置胎盤の種類

全前置胎盤、部分前置胎盤、辺縁前置胎盤

前置胎盤は子宮の出口を胎盤がどの程度覆うかによって定義が決まっています。

  • 全前置胎盤:胎盤が内子宮口を完全に覆う(2cm以上)
  • 部分前置胎盤:胎盤の一部が内子宮口を覆う(2cm未満)
  • 辺縁前置胎盤:内子宮口の辺縁に位置する(0cm)

定義を見ると難しく思ってしまうかもしれませんが、胎盤が子宮口を全て覆っているか、一部のみ覆っているかの違いです。

前置胎盤の原因は?

前置胎盤の原因はよくわかっていません。しかし、前置胎盤のリスクとなるものはわかっています。

  • 以前子宮の手術を受けた(子宮筋腫核出、流産、帝王切開など)
  • 高齢妊娠
  • 多胎妊娠
  • 喫煙者
  • 多産

このような方は前置胎盤のリスクが高いと考えられています。

前置胎盤の症状はある?

前置胎盤の場合、何か症状があるのかな、自分で気がつくのかなと気になる方もいるかもしれません。
前置胎盤の症状はありません。妊婦検診の際、超音波検査で指摘されて気がつく人がほとんどでしょう。
ただ、腹痛がなく突然出血することがあります。この出血を「警告出血」と言いますが、前置胎盤の場合、出血に注意が必要です。
少量の出血で気がつく場合もありますが、急に大量に出血する場合もあります。出血の量に関わらず、「前置胎盤」と医師から言われている場合は、すぐに病院へ連絡し受診しましょう。

いつわかる?前置胎盤の診断時期

先ほど解説した通り、胎盤は妊娠経過とともに大きくなりますが、胎盤の位置も子宮が大きくなるにつれて子宮口から離れていくことがあります。
そのため、妊娠初期に胎盤の位置が低めと言われていた方でも、妊娠後期には、胎盤の位置が上がって、問題ないとなることも多々あります。
そのため、妊娠中期までは前置胎盤の可能性があると言われていても、過度に心配しすぎる必要はないでしょう。
前置胎盤は超音波検査で診断しますが、妊娠32週頃までに前置胎盤と言われた場合、ほぼ前置胎盤で確定します。

前置胎盤を治す方法はある?

胎盤の位置は着床時に決まるため、前置胎盤を治す方法は残念ながらありません。お腹が張ると出血しやすいので、お腹が張らないようにすることが大切です。
そのためには、できるだけ安静にする必要があります。
また、運動や性交渉などもお腹が張る原因になるので避けることをおすすめします。

前置胎盤の場合、出産方法はどうなる?

前置胎盤の場合、胎盤が内子宮口を覆うため、出産方法は基本的に帝王切開で出産することになります。
低置胎盤
胎盤の位置が低い「低置胎盤」の場合は、胎盤の位置によって下からの分娩である経膣分娩で出産できる場合がありますので、主治医に確認しましょう。
帝王切開は赤ちゃんの成長とママの体を見ながら適切な時期を決めますが、妊娠37〜38週で予定帝王切開になるでしょう。
お腹の張りが増えると、出血量が増えるため、安全のために帝王切開の日程を早めることがあります。

前置胎盤の場合、転院が必要になることも

前置胎盤の場合、出血のリスクが高く、母子ともに安全に妊娠生活を送り、出産を迎えるために、転院が必要になることがあります。
クリニックなどでは出血が増えたときの対応が難しい場合があるので、麻酔科医が常駐している医療機関へ転院することがあります。

日常生活で気をつけることは?

前置胎盤と診断された場合、日常生活で注意することがあります。

出血に要注意

まずは出血に注意が必要です。
前置胎盤の場合、妊娠28週以降に出血のリスクが高くなると言われています。そのため、妊娠後期は特に出血に注意しましょう。
出血した場合、すぐにママの体や赤ちゃんへ影響が出るわけではありませんが、出血量が多いと、ママの命の危険に陥ることがあります。また、ママの出血量が多いと、血圧が下がり体の中をめぐる血液の量が減るため、赤ちゃんへ送る酸素量も減ってしまいます。そうなると、赤ちゃんも酸素が十分にないため、危険な状態になることもあるでしょう。
そのため、出血には十分注意しましょう。出血量が多い場合は、安静入院になることもあります。

できるだけ安静に

お腹が張ると出血すると考えられています。そのため、できるだけ安静にしましょう。
運動や性交渉は避けるようにしてください。マタニティヨガやマタニティスイミングもお腹の張りが増えることがあるため、できればやめておきましょう。
他にも旅行や外出についても、できるだけ控えることをおすすめします。妊娠中は外出先でお腹が張ったり、出血量が増えたりする場合がありますので、基本的には避けましょう。

仕事は動きすぎに注意

仕事については、お腹の張りや出血量の問題がない場合は、通常通り仕事をしても問題ないことがほとんどです。しかし、業務内容によっては立ち仕事であったり、よく動いたりすることもあるでしょう。
妊娠前は問題ない業務でも、妊娠中はお腹の張りが増える原因になりますので、業務内容の変更や軽減、在宅勤務への切り替えなどが必要になるかもしれません。
業務上、デスクワークなどが難しい場合は、休職しなければならないこともあります。妊娠経過をみながら、医師と相談しましょう。

前置胎盤は出血量が増えやすい?

前置胎盤は出血量が増えるリスクが高まります。通常の妊娠でも分娩後出血量が増えることがありますが、前置胎盤の場合、さらにリスクが高くなります。

通常、分娩すると子宮が自然に収縮し胎盤が自然にはがれます。胎盤がはがれると、さらに子宮が収縮し元の大きさに戻ろうとします。
この子宮の収縮が非常に大切で、出産後子宮の中に溜まっている出血が外に出ていきますが、前置胎盤の方は、子宮の出口付近に胎盤があります。子宮の出口付近は子宮が収縮する力が弱いため、出血量が止まらず大出血になる可能性があるのです。

そのため、前置胎盤と診断された方は、帝王切開の日程が決まると、産後の出血のために自分の血液をストックする、「自己血貯血」をする場合が多いでしょう。通常の輸血と比べて、自分の血液を輸血するため、アレルギー反応などが起こりにくい特徴があります。貧血の場合は、薬などで治療をしながら事前に自分の血を確保しておきます。
妊娠33〜34週ごろに自己血をとる病院が多いですが、詳しくは出産予定の病院に確認しましょう。

前置胎盤の場合、「癒着胎盤」を合併していることがある

前置胎盤の場合、「癒着胎盤」を合併していることがあります。
通常胎盤は、分娩終了後に自然にはがれますが、癒着胎盤の場合、子宮の壁にしっかりとくっついたままで、自然にはがれない状況です。前置胎盤の人でなくても癒着胎盤になることがありますが、癒着胎盤は前置胎盤の人の5〜10%がなると言われています。
癒着胎盤の場合、胎盤がはがれる時に大出血することがあり、子宮を全部取ってしまうこともあります。

前置胎盤の予防方法はある?

前置胎盤の原因がはっきりわかっていないため、予防する方法は残念ながらありません。
前置胎盤と診断された場合は妊娠中に出血する可能性が高いため、出血した場合すぐにかかりつけ医に相談しましょう。

前置胎盤の場合、入院が必要になる?

妊娠後期は出血するリスクが高くなるため、施設によっては事前に入院して、お腹の張りを抑える子宮収縮抑制剤を使ってお腹の張りを抑える治療をする場合もあります。お腹の張りや出血の有無、医療機関の方針によって異なりますので、医師に確認しましょう。

まとめ

前置胎盤は妊娠中からリスクが高く不安に思う方もいるでしょう。妊娠中は出血に注意が必要なので、少しでも出血があったらすぐに医師に相談してください。
また、お腹の張りが増えると出血につながるので、無理をしないように、できるだけ動きすぎないようにしてくださいね。

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この記事の監修
エナみらいグループ理事長 石渡 瑞穂
石渡 瑞穂
エナみらいグループ理事長
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