妊娠中にタバコやお酒、カフェインなど摂取しないように言われることは多くの妊婦さんが知っていることでしょう。ダメなのはわかるけれど、実際にどのような影響があるのか知っていますか?
特に妊娠中のタバコやお酒は赤ちゃんへの影響が大きいです。どのような影響があるのかを知り、妊娠中は摂取しないようにしましょう。
妊娠中のタバコ(ニコチン)はどんな影響がある?
妊娠中に限らず、タバコは健康へ多大な影響があるのは多くの方が知っていることでしょう。
タバコにはニコチンやタール、一酸化炭素といった有害物質が多く含まれています。有害物質は5300種類、発がん性物質は70種類とも言われており、ニコチン、タール、一酸化炭素は三大有害物質です。
タバコの有害物質は脳へと働きかけ、一時的な快感が得られるため「タバコを吸いたい」「タバコを吸わずにいられない」といった状態になりやすいのです。特にニコチンには依存性があり、タバコをやめたくてもなかなかやめられなくなります。タバコを吸い始める年齢が若ければ若いほど、依存性が強くなると言われています。
タバコを吸うことで、肺がんや口腔・食道がんなどの悪性腫瘍をはじめ、動脈硬化、脳血管疾患、心疾患など多くの病気に影響があると言われています。
また、タバコを吸わなくてもタバコの煙を吸ってしまう受動喫煙でも影響は大きいです。火のついたタバコから出る煙の副流煙は主流煙(タバコを吸っている人が吸い込む煙)よりも有害物質が多く含まれているため、喫煙しない人にも大きな影響を及ぼします。
妊娠していなくても、タバコは体へ大きな影響がありますが、妊娠中は特に赤ちゃんへの影響が大きいです。
妊娠への影響
- 早産や流産、死産
- 前置胎盤
- 常位胎盤早期剥離
- 妊娠高血圧症候群
赤ちゃんへの影響
- 低出生体重児
- 胎児発育不全
- 胎児奇形
特に喫煙本数が多ければ多いほど赤ちゃんへの影響は大きく、赤ちゃんの体重が100g〜300gほど少なくなると言われています。
妊娠中の喫煙は、血管収縮により血流が悪くなることや、タバコに含まれる一酸化炭素によって赤ちゃんへの酸素や栄養の供給が阻害されてしまうため、低体重や発育不全につながると考えられています。
また、口唇裂や口蓋裂、先天性心疾患といった特定の胎児奇形への影響は大きいです。特に高齢初産の場合は年齢による胎児奇形のリスクも高いため、喫煙しているとより奇形のリスクが高まるでしょう。
タバコに含まれる有害物質はニコチンや一酸化炭素以外にも多数ありますが、長期的な赤ちゃんへの影響は明らかになっていないため、妊娠したらタバコはやめましょう。
赤ちゃんが生まれてからの影響
妊娠中だけでなく、赤ちゃんが生まれた後も喫煙は子どもへの影響が大きいです。
- 乳幼児突然死症候群(SIDS)
- 赤ちゃんの筋肉の過緊張
- 喘息などの呼吸器疾患
- 2型糖尿病
- 注意欠陥多動性障害(ADHD)
など多くの影響があると言われています。
特に乳幼児突然死症候群(SIDS)は喫煙によるリスクが倍増すると言われており、長期的には喘息や糖尿病、注意欠陥多動性障害(ADHD)など多くの病気への影響も指摘されています。
妊娠中のお酒(アルコール)はどんな影響がある?
妊婦がアルコールを接種すると、胎盤を通して赤ちゃんの体内にもアルコールが運ばれます。赤ちゃんは自分でアルコールの処理をしようとしますが、代謝が未熟なため処理速度はゆっくりで、赤ちゃん自身もアルコールの影響を受けてしまいます。
妊娠中にアルコールを摂取すると流産や死産、先天性の異常が多くみられると言われています。飲酒量や飲酒の回数が多ければ多いほど赤ちゃんへの影響は大きく、低出生体重児のリスクもあるのです。
ただ、飲酒の代謝速度は個人差が大きいため、飲酒量の安全な量はわかっておらず、飲酒量と赤ちゃんへの影響についても不明な部分が多いです。
また、妊娠中はどの時期でも赤ちゃんへの影響は大きく、妊娠初期は胎児奇形、妊娠中期から後期は発達の遅れや中枢神経への影響(学習能力や記憶力、運動能力、感情など)があり、リスクが高いため、赤ちゃんのためにも禁酒しましょう。
胎児性アルコール・スペクトラム症候群(FASD)のリスクも
アルコールの摂取は、低出生体重児だけでなく、胎児性アルコール・スペクトラム症候群(FASD)のリスクがあります。
顔面を中心とした形態異常や脳障害などが特徴で、以下のような様々な症状があります。
- 顔面の特異的顔貌(平坦な顔面中央、薄い上唇)
- 発達遅延(低体重、体重増加の遅れ)
- 中枢神経系の障害(小頭症、脳梁の欠損などの脳の形態異常、感音声難聴、協調運動障害など)
胎児性アルコール・スペクトラム症候群の治療法はなく、唯一できるのは、予防することです。そのため、妊娠中は少量であっても禁酒しましょう。
授乳中もアルコールの影響はある
妊娠が終了するとアルコールを飲めると思っている方もいるかもしれませんが、授乳中であれば禁酒が必要です。飲酒は母乳の分泌量が減ると言われていて、血中のアルコールは母乳を介して赤ちゃんへと移行します。睡眠や成長への影響もあるため、飲酒は避けましょう。
どうしても飲酒をする場合、少量であれば飲酒から3時間程度は授乳を避け、中等量摂取した場合は、半日程度は授乳を避けましょう。その間は搾乳をして母乳は破棄し、ミルクをあげるようにしてください。
妊娠中のカフェインはどんな影響がある?
カフェインは妊娠中避けたほうがいいと聞いたことがある方も多いでしょう。ただ、お酒やタバコとは異なり、カフェインは必ずしも避けなければならないものではなく、適切な量を守れば、摂取しても問題ありません。
カフェインは神経を興奮させる作用があり、中枢神経に分布します。胎盤を通過するため、赤ちゃんへの影響もあります。カフェインは肝臓で代謝されますが、妊娠中は代謝の速度が低下すると言われており、カフェインの摂りすぎには注意が必要です。
カフェインの多量摂取は注意
妊婦がカフェインを多量摂取すると、流産や死産、低出生体重児のリスクが増加する可能性があります。ただ、少量の摂取では、流産や死産、低出生体重児や精神発達の遅れなどへの影響はかなり少ないと考えられています。
また、妊婦に限らずカフェインの過剰摂取は、興奮・めまい・動悸・吐き気などの急性症状をもたらすため適切な量を守りましょう。
授乳中もカフェインの影響はある
カフェインを摂取すると母乳にも含まれますが、摂取量が多すぎなければ影響はないでしょう。多量摂取すると過敏性や易刺激性(ささいな刺激に反応しやすい)、睡眠障害などが現れるため、妊娠中と同様に摂取しすぎないようにしましょう。
カフェインを多く含むものは?
カフェインは、コーヒーや紅茶、緑茶といったお茶に多く含まれ、その他にもエナジードリンクや清涼飲料水、コーラやココア、チョコレートなどにも含まれています。
食品名 | カフェイン量(100mlあたり) |
コーヒー | 60mg |
エナジードリンク | 32~300mg |
ほうじ茶・ウーロン茶 | 20mg |
紅茶 | 30mg |
玉露 | 160mg |
麦茶 | 含まれない |
参考文献:農林水産省|カフェインの過剰摂取について カフェインが含まれるもの
妊娠中のカフェインの摂取目安はどれぐらい?
世界保健機関(WHO)や欧米の保健機関では1日あたり200mg~300mgを目安にしています。コーヒーであれば1日2~3杯以下であれば問題ないでしょう。
ただ、コーヒーだけでなくお茶やチョコレートなど、カフェインを含む食材は多くあるため、コーヒーやお茶をよく飲む場合はコーヒーをカフェインレスにする、お茶を麦茶やルイボスティーに変更するようにしてください。
今はカフェインレスの飲み物の種類もいろいろありますので、お気に入りの飲み物を見つけてみましょう。
まとめ
妊娠中はタバコや飲酒、カフェインなどの嗜好品は避けましょう。特にタバコと飲酒は赤ちゃんへの影響がとても大きいです。今までタバコや飲酒がストレス発散になっていた方は他のストレス発散方法を見つけてみましょう。カフェインはコーヒーやお茶を飲むことで気持ちが安らぐのであれば、摂りすぎなければ問題はありません。
妊娠中、そして出産後に後悔することがないようにしましょうね。
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